政府機関の膨大なデータを公開、共有することで民間との橋渡しに
クラウドのメリットを活かした事例をいくつか紹介してもらった。
例えば、アメリカ航空宇宙局(NASA)では、火星探査機「Curiosity」からの映像データを保管、公開する基盤としてAWSを利用し、限られた予算で、次々に火星から送られて増え続けるデータを管理、集中するアクセスにも対応することができたという。
また米国立衛生研究所(National Institutes of Health:NIH)では、「1000 Genome Project」をAWS上で立ち上げている。NIHが蓄積してきたヒトゲノム情報は、合計250Tバイトにものぼる世界最大のヒト遺伝子データセットだが、これまであまり活用されてこなかった。活用するにはNIHと同様のサーバを構築してデータをコピーしてこなければいけなかったのだ。
「これを、AWS上でパブリックに利用できるようにしたところ、わずか1カ月の間に3200ものアクセスがありました。既に済んだ研究のデータを、研究者たちが手軽に使えるような環境で提供したことで、民間や教育機関の研究者と政府との橋渡しができるようになったのです」(Carlson氏)
シンガポールでは、政府機関全てが関わるクラウド地理情報システム「One Nation One Map」を構築している。この地図には民間企業や観光客まで誰でも利用することができ、情報を書き込むことも可能、月間1億5000万ものアクセスがあり、それをAWSが支えているのだという。
「従来の環境では、スケーラビリティや真の意味でのオープン性に乏しく、こういった情報活用が困難でした。政府が蓄えてきたデータを民間にオープンしたくても、今までなかなか手段がなかったのです。こうした官民の情報共有の課題に役立つのがクラウドです」(Carlson氏)
今回の来日で、同氏は「政府情報化統括責任者(政府CIO)」や自民党議員などと会談したという。
「日本政府もクラウドには前向きだという印象を受けました。民間と政府との協力関係にも、また景気対策としても期待しているという様子です」(Carlson氏)
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