ディストリビューションから発見へ
これらのトレンドはビジネスモデルに影響を与えている。ウェブ上にあるサービス、あるいはアプリストアにあるアプリを探す――これまで製品やサービスはわれわれの元に届けられていたが、探して見つける(発見)モデルへのシフトが起こっているという。これは、これまでブランド力のある一部の大企業が独占していた状態から、財務リソースが限られている大手以外の企業や人に門戸を開くものでもある。
だがこれは課題でもある。どうやって自分のアプリやサービスを発見してもらうのか。前提条件としてHawkinsは「単に面白いだけではダメ。面白いものは星の数ほどあり、ユーザーはすぐに飽きる。独自で珍しい体験を提供する必要がある」と述べる。
例えば自身が開発に携わった「EA Sports」の成功は、「問題を解決するシステマティックなビジネスモデルがあるから。これはほかでは代替できないもの」と分析した。Hawkinsは「発見はチャンス」として、さまざまな可能性を探る必要があるとした。
Facebookの場合、競合のページに自分の広告が、自分のページに顧客の広告が表示されるトラフィックを共有しながら、お互いのゲームをプロモーションし合うことになる。これは考え方の変換が必要になり、今後もこのような例がたくさん出てくると予想した。
教育は危機的状況--教育化のためのゲーム「IF」
HawkinsはSteve Jobsに誘われて入社したAppleでキャリアを積んだ後、1982年にEAを立ち上げ、その後もビデオゲームコンソールの3DO、Digital Chocolateなどを仕掛けた起業家だ。そのHawkinsが目下取り組んでいるのが「教育」だ。「IF you can」という組織を立ち上げており、今年英ロンドンにスタジオを設けたことが報じられている。
Hawkinsは教育に乗り出す背景として、「教育は危機にある」と述べる。米国では小学校に入学する生徒の約半分が高校を修了できないという。原因の1つに子どもの現状と教育界のギャップがあるようだ。
数百年前の教育制度の下でテストの点数を上げようと教師らが躍起になる一方で、子どもたちは放課後本を読むよりゲームやモバイルで遊ぶ時代だ。さらには、サイバーいじめ、学校での犯罪(銃乱射事件)などの懸念も後を絶たない。「現在の教育システムは基本的に機能していない」(Hawkins)
一方で、コンピュータはシュミレーション、集中訓練、ファンタジー、データ、追跡など得意なことがある。「これを教育に適用すればメリットを得られる」とHawkins。例えば今の子どもたちは「注意力がない」という指摘があるが、コンピュータの応用により注意力とモチベーションを効果的に結びつけられるとも分析する――「ゲームに子どもの関心があるのなら、ここにリーチすればよい。端末を取り上げても効果はない」とHawkins、関心があるゲームならモチベーションもあがるはずだ、と主張する。
IFではゲームやコンピュータの長所を活用して教育改革を試みる
IFでHawkinsはEA Sportsの成功パターンを踏襲する。EA Sportsではコンピュータ技術やゲームエンジン、ユーザー体験の専門家に加えて、スポーツ界のプロやスポーツ界のデータを取り入れた。IFでは教科の専門家、教育の履修計画や教科書、指導標準などを取り込み、物語であれば人は記憶するという特性なども取り入れるという。
「どうやってゲームを教育に利用するのか。静かなレボリューションにつながる潜在性があると思う。学習のためのゲーミフィケーションではなく、ゲームのための学習化(learnification)だ」とHawkinsは構想を語る。政府のカリキュラムに沿うような教育ゲームはまだほとんど存在せず、この分野の先駆者を目指すと続ける。4人の子どもの父親でもあるHawkinsは、「すばらしい新世界(Brave New World)だ。教育はタブレット、アプリ、ゲームから恩恵を受けることができると信じている」と目を輝かせた。
(文中敬称略)
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