三国大洋のスクラップブック

リビングの主役に躍り出たXboxのモメンタム

三国大洋 2012年07月10日 09時00分

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 マイクロソフトのタブレット端末「Surface」発表から始まった一連の話題を、本連載で扱うのは今回で4回目となる。

 そろそろいったん区切りをつけないと……と思いつつも、そうできないのには理由がある。新たなニュースが出たり、はたまた刺激的な洞察やエピソードが公開されたりして、Surfaceに関してはネタ切れする気配がないのだ。

 さて、今回は宿題となっている「Xbox」について書いていこう。

単なるゲームコンソールから脱却したXbox

 Forbes誌が6月はじめに「"マイクロソフトのXboxがリビングルーム戦争で勝利を手にしつつある理由」というタイトルの記事を掲載した。毎年恒例の「E3」開催に合わせたタイミングで出ており、かなりの分量がある特集記事となっている。

 スティーブ・バルマーCEOをはじめ複数の幹部がインタビューに応じていることから、マイクロソフト側の協力(もしくは積極的な働きかけ)があって実現したものと推測できる記事だ。

 この記事の一番の「お土産」は、記事に掲載されたグラフだ。

 「Xboxはリビングルーム(向け)ゲーム端末市場でトップの地位を手に入れたが、このリードを維持するためには有料テレビ放送事業者から顧客を奪い、さまざまなハードウェアを他社よりも多く売っていく必要がある」(註1)とサマリーが入っている。読者自身で是非確かめてもらいたいグラフだが、念のため気になる数字を書き出してみよう。

  • 現時点でのXbox事業の売上は、マイクロソフト全体の約7%
  • Xbox事業の年間売上(2011年)は49億5000万ドルで、61%がハードウェアおよび周辺機器、20%がハードおよびソフトに関するロイヤルティ(=ライセンス)収入。17%がオンラインサービス「Xbox Live」に年間50ドルを支払う有料契約者からのもの
  • 据え置き型ゲーム機やメディア端末のメーカー別累計販売台数は、任天堂の「Wii」が9500万台、続いて「Xbox 360」が6700万台、ソニーの「PlayStation 3」が6400万台。アップル「Apple TV」は推定650万台
  • 「Xbox Live」の加入者は約4000万人(世界35カ国)——そのうち有料契約者が1700万人。人数だけでみると、衛星テレビ最大手のディレクTVが有料契約者3300万人、ケーブルテレビ首位のコムキャストが同2200万人

 また、その他の点を箇条書きにしてみると、

  • 5月にXbox 360の価格を199ドルから99ドルに値下げ(ただし2年間の「Xbox Live Gold」加入が条件)
  • 今年春、米国のXbox Live加入者のメディア(動画、音楽)消費時間が、ゲームで遊ぶ時間を初めて上回った
  • 世界全体ではXbox Liveの利用時間が前年比で30%増。とくに動画視聴時間は同140%増加
  • 来年には後継機種「Xbox 720」を投入する見込み

 などといったところ。「XboxはバルマーCEOのお気に入りの武器になっている」「Xboxはマイクロソフトにとっての『トロイの木馬』——しかもすでに利益が出ている木馬である」といった威勢のいいフレーズも並んでいる。

 好調なXboxを支えるのは、2年以上も前から目立ってきた「コードカッター」というトレンドだ。「ほとんど観ることもないようなチャンネルまでバンドルされた割高な有料テレビを解約して、代わりにネットフリックス(註2)のようなオンライン配信サービスなどで安く済ませる」——簡単に言うとそんな流れが続いている。

 Forbesの記事に引用されている調査会社ニールセンのデータによると、米国の有料テレビ放送市場は910億ドル、その他にテレビ広告市場が720億ドルあり、攻(主にITやウェブ系の企業)と守(ケーブルテレビ事業者など)が入り乱れて合従連衡している真っ最中。事態はさらに混沌とするばかり……といった感がある(註3)

 アップルとは異なり、B2Bを苦手としないマイクロソフトは、とりあえず既存事業者の側と手を組む方向で影響力を拡大しようとしている。「(ケーブル事業者が配る)セットトップボックスなんかもう要らない、Xboxひとつあれば十分」ということで、コムキャストやベライゾン(固定線ブロードバンドサービスのFiOS TVを提供)などに、Xboxの取り扱いを働きかけているという。

 ちなみに、セットトップボックス(STB)といえば、グーグルが買収したモトローラが大手だったりする。これまでのグーグルはご存じの通り、「Google TV」を投入して有料テレビ事業者の商売をあからさまに出し抜こうという素振りを見せてきたから、一筋縄ではいかなそうだ。同社が今後どちらのアプローチに転ぶか、非常に興味深い。(次ページ「アップルとグーグルが獲得していない領域がある」)

註1:グラフに記載されたサマリー

Microsoft has the lead in the living room. But in order to stay on top it will have to steal away pay-TV customers and outsell a whole host of hardware.

Microsoft Xbox Is Winning The Living Room War. Here's Why.


註2:今風に言えば「Pivot」?ネットフリックスの規模

ネットフリックスの6月時点の有料加入者数は2300万人、視聴時間は延べ10億時間を突破。

The Los Gatos, Calif.-based company's stock rallied on news that Netflix's 23 million streaming-service customers, in June, watched more than 1 billion hours of movies and television shows on the Internet.

Netflix streams record 1 billion hours of video in June - FierceOnlineVideo

この発表を受けて株価が二桁もジャンプ。

Netflix Shares Surge 13% After CEO's Boast - Digits (WSJ)

ただし、大手コンテンツ提供者と交わした独占配信権に関わる契約の潜在支払額(コミットメント)が推定30億ドル程度まで膨らみ、しかも金額を確定させづらいために簿外の負債となっていることも最近になってわかった。Bloomberg TVではこれが「時限爆弾になるおそれも」などと伝えていたばかりだ。

The Scary $3B Bomb Not on Netflix's Balance Sheet - Bloomberg TV

ちなみに、昨年の今時分に最高値300ドル直前をつけた同社の株価は、その後急落して現在80ドル前後の水準にある。


註3:合従連衡の真っ最中

混沌化の一因は、コンテンツを握るいわゆる「ハリウッド」の各社(映画だけでなく人気テレビ番組の製作も)が、まだどっちとも態度を決めかねていることにあるのかもしれない。

これまでの有料テレビ事業者との付き合いではじり貧に、さりとてネット経由の配信事業者からの収入では、まだ十分に潜在的損失分を埋め合わせられそうなところまで大きくなっていない。いろいろと試行錯誤している様子が見て取れる。

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