広報責任者に元ジャーナリストを起用した米Oracle
先日、Oracleは「Chief Communications Officer(CCO)」という職位を新設した。CCOは執行役員の一員であり、広報部門のトップ。企業のブランディングやプロモーションに対して意思決定をし、企業が語るストーリー定義やストーリーを伝えるべきターゲットを設定する役割を担う。有形の財産で企業価値の最大化に務めるのがCMOなら、CCOは無形の財産で企業価値の最大化を担うトップといったところだろうか。
同社初のCCOに就任したのBob Evans氏は元ジャーナリストでもあり、Tech系メディアのディレクターを務めていた経歴を持つ。なぜOracleはCCOという職位を新設しなければならなかったのか。そして、この職位に純粋培養された広報のエキスパートではなく、元ジャーナリストを就任させたのか。そこにはOracleを取り巻く環境変化が関係する。
グローバルに展開するOracleにとってブロガーやソーシャルメディアは無視できない存在だ。「市民」から発信されるメッセージは、時には歴史あるメディアより影響力を持つこともある。
プレスリリースを発行してメディアに紹介されることだけでは不十分であり、こういった新しく登場したチャネルにも、自分たちを取り上げてもらうことはとても重要なことなのだ。
広報を取り巻く環境が変化している中で、IT業界の昔ながらの風習である「“SPARC M6”プロセッサを最大32個搭載し、最大32テラバイトのメインメモリを搭載」といったスペック語りをしたところで、ギークなブロガーは興味を持つかもしれないが、一般的なブロガーが興味を示してくれる可能性は限りなく低い。そのスペックに何の価値があるかわからないからだ。
製品やサービスをアプローチする部門も変わりつつある。
企業の情報資産はオンプレミスからクラウドへと緩やかではあるが進行しており、大きなトレンドとして推移している。そんな中、将来的には企業の情報システム部門はクラウド化によってスリムになり、削減された予算はマーケティング部門に割り当てられていくようになっていくと米Gartnerは予想している。
Oracleもこの流れに対応するように、マーケティング部門への商材力を強化している。情報システム部門へのアプローチだけでなく、マーケティング部門へのアプローチが必要になってくる。当然マーケティング部門はITのプロではないため、マーケティング部門の人間に響くアプローチが求められるのだ。
後編ではOracleが取り組む具体的なアプローチ方法を解説する。
- 大元隆志
- 通信事業者のインフラ設計、提案、企画を13年経験。異なるレイヤの経験を活かし、技術者、経営層、 顧客の三つの包括的な視点で経営とITを融合するITビジネスアナリスト。業界動向、競合分析を得意とする。『ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦』など著書多数。
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