英国式シリコンバレーは成功するか?--ロンドンの「テック・シティ」(後編)

Steve Ranger (TechRepublic) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2014-02-14 07:30

 (編集部注:前編は2月7日に公開されています

#3:ブリティッシュポップに対するDavid Cameron首相からの回答?

 しかし、イースト・ロンドンのテクノロジエコシステムを単に目新しいものから、経済成長に結びつく実際のけん引力へと変えたのは、こういった初期の住人たちによるコミュニティー精神だけではなかった。政府もイースト・ロンドンをイノベーションの培地にするというアイデアの促進に一役買ったのだ。

 2010年の終わり頃、政府はシリコン・ラウンドアバウトという流れを支援し、「テック・シティ」というブランドを新たに作ったうえで、IntelやGoogle、Facebookといった企業から資本の投資面でのサポートを募る一方、ロンドンで事業を興したいという起業家のためにビザ条件の緩和を発表した。David Cameron首相はイースト・ロンドンでの演説において、「現在のところシリコンバレーはハイテク分野における成長とイノベーションで世界をリードしている。しかし、シリコンバレーだけがそうならないといけない理由はない。そこで問題だ。そういった挑戦者はどこにいるのか?バンガロールか?ホーフェイか?モスクワか?」と述べた。

 「今日、私が主張したい点は、本当に挑戦する自信があるのであれば、そして必要なものに対する理解があるのであれば、ロンドンがその1つになれるということだ。素材はそろっている」(Cameron首相)


 また政府は、主に新しい企業と投資家をイースト・ロンドンに引きつけるとともに、地元企業の発展を手助けすることで、この地域のIT企業の成長をサポートするという目的の組織Tech City Investment Organisationを立ち上げた。

 過去にTech City Investment Organisationの最高経営責任者(CEO)を務め、現在ではロンドンのもう1つの金融地区であるカナリーワーフで、新興企業向けのアクセラレーター企業Level39を運営しているEric Van der Kleij氏は「3〜5年前におけるロンドンのテクノロジ分野と現在のそれとの違いを言い表すとすれば、『繁栄』という表現になるだろう。今こそ本腰を入れる時だ」と語る。また、「テック・シティにまつわるイニシアティブ、および数多くの新しい企業をロンドンから立ち上げたり、ロンドンに拠点を移してもらうことによって既存のテクノロジ分野の成長を増幅させようとする取り組みを受け、多くの新興企業がさまざまなものごとに挑戦し、教訓を得てきている。思い通りの結果を出せなかったものも数多くあったが、本当に素晴らしい成長と高い潜在的機会を生み出すものもいくつか出てき始めている」と述べている。

 そして、Van der Kleij氏は「われわれが成し遂げた最高の成果は、この地域の企業に対して光を当てたことだ。ロンドンには今や、大きく成長するテクノロジ企業をサポートできる、そして実際にサポートするだけのエコシステムができあがっているという明確なメッセージを世界、特に投資家コミュニティーに向けて送る必要があったため、これは本当に重要だった。今までは、常にそういったサポートがあった訳ではなかった。過去にもドットコムというブームがあったとはいえ、そのブームは維持されずに終わった。しかし私にとって、今回の流れはずっと長い間続きそうなものに感じられる」と付け加えた。

 一部の人たちは、テック・シティに対する政府の興味が中途半端であると否定的に見ている(労働党政府によるブリットポップやクール・ブリタニアの利用を思い出すとやゆする声すらある)ものの、新興企業を取り巻くこの地の状況に焦点を当てたことで、そういったものに対する信頼と認識は他の方法では成し遂げられないほどに引き上げられた。

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