しかもNECは新製品のNX7700xシリーズを、国内だけでなくグローバル市場に向けても積極的に拡販していく構えだ。同社の全方位戦略がどれだけの広がりを見せるか、注目しておきたい。
「プライベートかパブリックか二者択一ではなく、双方を行き来できるハイブリッドなクラウドを推進したい」 (日本IBM 小池裕幸 執行役員)
日本IBM 執行役員 小池裕幸氏
日本IBMが先ごろ、クラウド事業戦略についての説明会を開いた。同社でクラウド事業を統括する小池氏の冒頭の発言は、その会見で、IBMによるクラウドサービスの提供形態の勘所を語ったものである。
小池氏はクラウドについて、冒頭の発言とともに、「クラウドは単なるITインフラではなく、企業の売り上げを伸ばすためのエンジンである」「グローバルでビジネスを展開できるクラウドを使って、新しいビジネスモデルを創出していきたい」「特定のベンダーにロックインされることのないオープンなクラウドを広めていきたい」というのが、IBMの考え方だと強調した。
会見内容については関連記事に詳しく記されているので参照いただくとして、ここではIBMによるクラウドサービスの提供形態に注目したい。
IBMによるクラウドサービスの提供形態
図に示したのが、その全容である。小池氏はこの図を示しながら、IBMがプライベートクラウドからパブリッククラウドまでフルラインナップで、顧客に最適な製品やサービスを提供していることを説明した。この図の中で、一番下に同社のクラウド向け製品サービスである「PureSystems」「IBM SmarterCloud Enterprise+」「SoftLayer」の適用範囲が大まかながら記されているのもチェックポイントである。
それにも増して注目されるのは、小池氏が冒頭の発言で注力するとしたハイブリッド領域の中央にある専用プライベートクラウドだ。
IBMが言うこの専用プライベートクラウドは、IT資産をクラウドベンダーが所有し、それを特定の企業グループが利用する「ホステッドプライベートクラウド」と呼ばれる形態のものだ。ユーザー企業が所有しないことから「持たないプライベートクラウド」ともいわれる。実はこの「持たないプライベートクラウド」が、クラウドサービス市場で今もっとも激戦区となりつつある。同社としてもこの領域に最も力を入れていく構えだ。
さらに、IaaS型サービスとしてAmazon Web Services(AWS)に対抗できるパフォーマンスを備えているというSoftLayerを加えたことで、IBMのクラウドサービスはかなり厚みを増した印象がある。
小池氏によると、最近ではSoftLayerをベースに付加価値をつけてビジネスを展開するサービスプロバイダーも増えてきたそうだ。そうした付加価値サービスを特定の顧客に提供すれば、それは顧客から見てホステッドプライベートクラウドと同様の利用環境にもなり得る。実はAWSもこうしたエコシステムが増殖的に広がっていることで勢力を伸ばし続けている。IBMのクラウドサービスがますます厚みを増したことで、市場競争がさらにヒートアップするのは間違いなさそうだ。