犯罪行為を働くハッカーといえば、暗号のことしか頭にない技術オタクの姿が目に浮かぶかもしれない。「ゲームプレーヤー」「パズル解読者」「PC操作の達人」といったタイプだ。しかし最近になって、少し違った姿が浮かび上がってきた。一言で表すなら、ハッカーも普通の人間、という点が注目されはじめたのだ。
オンラインの脅威について考えるとき、たいていの場合、わたしたちは技術的な側面に目を向けがちだ。例えば、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)、クロスサイトリクエストフォージェリ (CSRF) の巧妙さ、各セッションや許可、認証、プロキシ、クエリストリング操作などだ。それらにばかり注目していると、攻撃の根本を見逃してしまうことになる。サイバー攻撃の真の原因は、ハッキング行為というよりはむしろハッカーそのものに潜んでいるからだ。
ここからは、ヒューマンファクターの立場から、ハッキングに対する認識を新たにしてみたい。最初に、ハッカーの急所を明らかにしてみよう。それは「時間」と「金」だ。ハッカーが嫌いなことを1つ挙げるとすれば、それは「貴重な時間の浪費だと分かっている仕事に手を出すこと」だ。そして、ほとんどのハッカーに足りないことは「辛抱すること」だ。ハッカーは結果を、利得を、金をすぐに求める。
ハッカーにとっての経済的な利点を視野に入れた場合、わたしたちに何ができるだろうか。まず、ウェブサイトやデータセンター、ネットワークへの攻撃に要する時間、労力、コストといった負荷を増やす方法を見つけることだ。また、重要かつ有効なセキュリティツールをもっと活用することで、ハッカーに時間を浪費させ、攻撃の価値を損なわせるのも効果的だ。
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