ドイツのSAPは現地時間の4月17日、2014年度第1四半期(1~3月)の業績を発表した。非国際会計基準(IFRS)でのクラウドサブスクリプションとサポート売り上げが固定通貨換算ベースで38%増え、クラウドへの移行に成功したことを強調した。営業利益は、固定通貨換算ベースで7%増、実通貨ベースでは2%増の9億1900万ユーロだった。地域別では、中国のソフトウェアライセンス売り上げが好調だったものの、日本は予想を下回った。
クラウドが急成長
クラウドサブスクリプションとサポート売り上げが、固定通貨換算ベースで38%増、実通貨ベースでは32%増を記録した。クラウド分野の年間予測売り上げは11億ユーロ近くになったとしている。
繰り延しのクラウドサブスクリプションとサポート売り上げは、3月末時点で4億5400万ユーロとなり、固定通貨換算ベースで前年同期比29%増だった。SAPのクラウドアプリケーションの総利用者数は3600万人を突破しており「業界の全ベンダーの中で最多」だとし、全体を通じてSAPは「クラウド分野が急成長している」と説明している。
ソフトウェアは9%増
統合基幹業務システム(ERP)などのソフトウェアと関連サービスの売り上げは、固定通貨換算ベースで9%増、為替の逆風を受けた実通貨ベースでは4%増にとどまり、30億6000万ユーロだった。
HANA「普及率は好調」
インメモリデータベース「HANA」の顧客企業数は3200社以上、HANA上でビジネスアプリケーション群「Business Suite」を使用している顧客は1000社近く、HANAプラットフォーム上で開発中の新興企業は1200社以上で、活気あるエコシステムを構築しているとする。HANAについて「第1四半期の普及率は好調」とするものの、具体的な伸び率などの数字は公表していない。
Hybris関連は3ケタ成長
顧客関係管理(CRM)系のソフトウェアでは、顧客保持の在り方の見直しや、リアルタイムでクロスセルやアップルセルの新たな機会を見つけるといった取り組みに企業が取り組んでいると市場環境を説明。その中で、買収したHybrisの「オムニチャネルE-コマースプラットフォーム」と「SAP Cloud for Sales」の組み合わせが、ソフトウェア売り上げとクラウドサブスクリプション、サポートの合計で3ケタの成長率を達成しているという。
また、ウェブベースでの企業の調達分野では、こちらも買収したAribaのネットワークにおける直近12カ月の取引総額が5000億ドルを超え、利用企業が150社に上るなど好調をアピールした。
協業関係では、SAPと米Accentureが双方の専門家で構成する「Accenture&SAPビジネスソリューショングループ」を結成しており、クラウド経由で提供するpowered by SAP HANAの統合型業種別ソリューションを共同開発している。米Adobeとは「Adobe Marketing Cloud」と「Hybris Commerce Suite」、HANAプラットフォームのの組み合わせによる、新たな戦略パートナーシップも締結しているとした。
日本の業績は予想を下回る
地域別の業績で、アジア太平洋と日本は、「好悪混在」と表現。クラウドサブスクリプションとサポート売り上げは、固定通貨換算ベースで43%増と「非常に好調な四半期」だった。ソフトウェアとソフトウェア関連サービスの売り上げは、固定通貨換算ベースで「1桁台中盤の伸び」を示した。
特に「中国は著しい好業績」だった。中国では、ソフトウェア売り上げが固定通貨換算ベースで2桁成長を達成し「SAPの中国に対する長期的なコミットメントと成長戦略の成功を裏付ける結果となった」としている。一方で「日本の業績は予想を下回るものだった」としている。これについてSAPジャパンは「ERPからクラウド&プラットフォームのカンパニーへの転換は着実に成功している」とした。
見通しは変わらず
2014年度通年の見通しは、以下の1月21日の発表内容と変わらず。
- 通年のクラウドサブスクリプションとサポート売り上げは、約9億5000万~10億ユーロ(2013年=7億5700万ユーロ)の見込み。この範囲の上限は、2014年度の成長率を買収による影響を調整した後の2013年度の成長率と同様の32%に設定した場合のもの
- 通年のソフトウェアとソフトウェア関連サービス売り上げは6%~8%拡大する見込み(2013年=140億3000万ユーロ)
- 通年の営業利益は58億~60億ユーロ(2013年=55億1000万ユーロ)の見込み