2000年代に成人した若者たちは、われわれが今住んでいるこのデジタル世界を実際に作った世代とは、プライバシーや情報セキュリティについてかなり違う考えを持っている。
最近の若者たちにとって、これは違う世界だ。われわれの世代の多くは、インターネットのセキュリティの話など話題にも上らなかった時代に育った。しかしわれわれの子供世代にとって、プライバシーや情報セキュリティは重要な問題だ。このことを念頭に、筆者は自分の娘に手紙を書いた。
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娘へ
お父さんです。君にこの手紙を書いていると、10年以上前に、君のお姉さんに同じような手紙を書いたときのことを思い出す。その時は、便せんにペンで書いた手紙を、彼女が見つけるようにコーヒーメーカーの横に置いておいたんだ。
だけど今日は、「iPad」でこの手紙を書いている。今お父さんは君のお兄さんの家にいて、この手紙はその家のWi-Fiを使い、ケーブルテレビのネットワーク経由でISPに渡り、最後には学校にいる君の「iPhone」に届く。10年前、君のお姉さんに書いた手紙は、2人だけの間のもので、見る人がいるとしても、同じ家の中にいる家族だけだった。だけど、この手紙は違う。この手紙を読みたがっている人がいるとすれば、誰がこれを見ていてもおかしくないんだ。
もう1人のデジタルな自分
君や君の世代の人たちは、素早く情報をやりとりできてあたりまえの時代に育っているし(その多くがとても個人的な情報だ)、そのことを不思議だとも思っていないだろう。だけどお父さんが13歳の時には、君や君の友達がやりとりしているような文章を書くときには、紙をフットボールの形に折りたたんで渡す前に、何度も繰り返し下書きをしたものだったんだ。
今では君やお父さん、友人や家族はみなインターネット上に存在している。これは、(多くの場合あまり深く考えずに)個人情報の断片をデジタルの海に放り込んできたからだ。「デジタル」なお父さんと「デジタル」な君がいて、お父さんは今、現在もそしてこれからも、君がデジタルな君について考えることができるように、この手紙を書いている。なぜそれが必要なのか。それは、もう一人の君が住んでいるデジタル世界は、ほぼあらゆる人に共有されており、そのデジタルの君は本物の君につながっているからだ。
IDの盗難については話したことがあるので、それについて心配するには少し若すぎるにしても、その意味はわかるはずだね。だけどお父さんは、それほど遠くない昔、ウェブサイトでクレジットカードを使って何かを買うほど、インターネットを信頼していなかった時代があったのを知っているんだ。だけど今では、誰もがそうやってものを買っている。われわれは普段あまり深く考えていないが、だからこそ、「デジタルの自分」について考えておく必要があるんだ。今は誰でもわたしについて知り、わたしになり、わたしのお金を盗み、存在を盗むことができる。状況はますます悪くなっているんだよ。これに気づくことは、この問題に立ち向かうことでもある。
君は(そしてすべてのインターネットユーザーは)、普段使っているコンピュータやデバイスをパスワードで守るという習慣を身につけているべきだ。さらに、そのパスワードは、デバイス自体の中に保存してはいけない。
ペンで書かれたもの
デジタル世界においては、セキュリティのリスクはIDだけではない。携帯メールやブログ、ツイートなどでした発言は、ずっと残ってしまう。インターネット上の情報は、鉛筆ではなく、ペンで書いたようなものだ。つまり、一度出してしまったものは消すことができない。自分が消したと思っているものも、ずっと残ることがあるんだ。