ビッグデータを中心に据えたシンポジウム「Big Data Conference 2014 Spring」が4月22~23日に開催。ビックデータを活用する企業や研究者から活用事例や知見などが議論された。
米Babson College教授でDeloitteアナリティクスシニアアドバイザーのThomas Davenport氏
「Analytics 3.0」と題したキーノートセッションでは、米Babson College教授であり、Deloitteのアナリティクスシニアアドバイザーを務めるThomas Davenport氏が登壇し、データ解析のあり方などを話した。
Davenport氏は『Harvard Business Review』2012年10月号に掲載された「Data Scientist:The Sexiest Job Of the 21st Century」という記事で注目を集めた(日本語記事は『DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー』2013年2月号に「データ・サイエンティストほど素敵な仕事はない」として掲載)。
ビックデータ前提の経営が求められている
いまや、あらゆる分野にビックデータは浸透しつつある。それに対して、大企業はビックデータにどのように取り組むべきなのだろうか、と参加者に投げかけた。
「ビックデータは、スタートアップやネット企業にとっては新しい存在かもしれないが、多くの企業はそれ以前から扱ってきたとも感じている。大企業ではこれまでも新しい種類のデータを自社システムに取り入れており、データを活用してコスト削減や製品管理などをリアルタイムでやれることを想像するかもしれない。場合によってはイノベーションを促進することもあるだろう」
貨物運送のUPSは、1980年代からビックデータを活用し、配送車に搭載されたセンサをもとにドライバーの性能管理や配送ルートの最適化などにより、コスト削減に成功している。UnitedHealthcareは、自動言語処理を使って録音されたコールセンターの問い合わせ電話の内容をテキスト化し、そのデータをもとに顧客満足度向上に取り組んだりしている。つまり、データを活用すること自体は、新しいものではない。
では、データ活用のどこに視点を視点を向けるべきなのか。ビックデータを単純な大規模なデータを扱うだけでなく、非構造化データの処理と関連技術の性能の高さとコストの低さに注目し、大企業における本格的なビックデータ活用の時代といえる今こそ、「Analytics 3.0」の時代だという考え方をDavenport氏は提唱している。
Analytics 3.0以前の姿
Davenport氏が提唱するAnalytics 3.0とは何か。それまでの1.0や2.0との違いはどこにあるのだろうか。
Davenport氏はAnalytics 1.0について、社内の組織運営における従来的な社内報告書などの記述をもとに意思決定するものだと指摘する。データは比較的小さく、構造化されたデータである。分析モデルは「バッチ型」であり、完成に数カ月を要する。バックオフィスで完結し、現場の業務部門や意思決定と離れた場所で行われ、分析された情報をもとに社内の意思決定に寄与する形だ。
「1.0時代は、仮説から検証、チェックといった一連のフローに数カ月が必要で、フィードバックをもとに改善案を構築し実行するのにさらに時間がかかっていた。データ分析と現場、意思決定はバラバラで、過去を掘り起こしてばかりだった」
Analytics 2.0は、主にシリコバレーなどのネット企業が中心となって起こした動きだ。オンラインデータの分析をもとに、社内の意思決定に用いるだけではなく、顧客に提供する製品やサービスの基盤をなすものとなった。データも社内ではなくソーシャルメディアなどの企業の外部のデータをもとに、非構造化された複雑で大規模なデータを活用することが求められている。膨大なデータを効率的に処理するために、クラウドやHadoopなどが利用される。
「データドリブンな動きをもとに、GoogleやLinkedInは大きく成長した。データサイエンティストも、バックオフィスではなく新製品開発にも参加し、アジャイル型開発をもとに分析とビジネスの橋渡しの存在となった」
まさに、現在はAnalytics 2.0のまっただ中と言えるだろう。しかし、次の時代を見据える中で、Analytics 3.0の動きが次第に起こりつつあると Davenport氏は語る。