「Cortana」の先にあるもの--マイクロソフトが目指す未来の人工知能 - (page 2)

Simon Bisson (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル

2014-06-10 07:30

 ここで重要なのは規模だ。データは多ければ多いほど良い。だが、結果としてできあがるルールやニューラルネットが誤った相関関係を生み出さないように気をつける必要がある。ニューラルネットは、因果関係のある相関関係について間違いを犯しやすいからだ。人間は、傘を持って歩いている人のせいで雨が降るわけではない、ということを理解できるが、ニューラルネットがそれを区別するのは難しい。

 MSRの人工知能研究の重要な部分は、何が原因で何が起きるのかを理解することだ。このプロセスは人工知能科学者の間で因果推論と呼ばれている。それは複雑な問題であると同時に、Cortanaがおしゃべりに基づいた会話型ルールエンジンを採用しているというのに、まだ状況に関する事柄を理解(状況の推論)できないことの理由でもある。しかし、人工知能の製品化はまだ先かもしれないが、研究プロジェクトはかなり進んでいる。MSRのレドモンドオフィスがあるBuilding 99には受付ロボットがいる。その目的は、人間同士が話しているときに聞き分けることだ。

 Lee氏は聴衆に向かって、Building 99で進行中の別の人工知能の実験について説明した。この建物では、エレベータに向かって歩いて行くと、たどり着く前にドアが開く。エレベータを制御しているのはさらに別のニューラルネットで、こちらはエレベータ近くのホールにいる人間の動きに合わせるように設定されている。ホールでは、建物のアトリウムにいる人々の動きを、カメラが何カ月にもわたって観察していた。

 このニューラルネットは、エレベータに向かう人の動きの相関性を探ってきた。その作業を複雑にしていたのは、エレベータが建物内のレストランへのルート上にあることや、アトリウム内のオープンスペースが即席の打ち合わせスペースとして使われていることだ。数カ月にわたる観察の結果、このニューラルネットはアトリウム内の人々の意図を理解できるようになり、人間の行動のモデルを作成し、そのモデルと実際の行動を比較するようになった。作成した意図のモデルに十分自信が持てるようになると、エレベータの制御を行うように自動的に切り替わった。

 この人工知能のニューラルネットの中で進化してきたものは、人間の力では作り上げることのできない新しいものだった。変動する要素があまりにも多く、アトリウムを通る人が取るルートは無数にある。人工知能システムは、位置関係を認識する能力を身につけ、好ましくない要因を除外する必要があった。

 それもまた、Cortanaの音声認識や、Bingの翻訳ツール、そしてSkypeの新しいリアルタイム通訳機能を支えるニューラルネットの興味深いところだ。われわれにはあまり理解できないものだが、それが示す振る舞いは、世界の仕組みについて新しいことを教えてくれる。

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