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アベノミクス相場の障害を超えネット証券の次フェーズに挑む--SBI証券の髙村社長 - (page 2)

大西高弘 (NO BUDGET) 怒賀新也 (編集部)

2014-06-19 07:30

複数のネット証券に共通する悩みのタネ

 ただし、こうした構想を進める髙村氏にも悩みのタネがあるようだ。それは、外部に委託しているバックエンドシステムの問題である。顧客の注文情報はSBI証券が保有するシステムで処理されるが、最終的にはその後個人情報を含んだ取引情報は外部のバックエンドシステムにASPサービスを通して処理され、蓄積される。これは監査に必要な情報で、1日50万件を超える取引情報が日々蓄積されている。

 各ネット証券企業は、自前でこうしたバックエンドシステムを保有しているケースもあるが、各社、新興企業ということもあり、自前ではなくSBI証券のように外部企業に委託している企業がほとんどだ。

 「自社システムであれば開発者をコントロールし、コスト削減努力を自分たちの発想で進めることができます。しかし、外部に委託しているのでそれができず、価格競争力が失われてしまう」(髙村氏)

 SBI証券は、年間約120億円のシステムコストが減価償却分も含めて負担になっているという。そのうち40億円前後が変動コスト、50億円前後が固定コストになっている。こうしたコスト構造の中、この外部委託コストがかなりのウェートを占めている。外部委託をやめ、複数の同業他社と共同でバックエンドシステムを運営した場合、年間で1社20億から30億円の負担軽減ができる可能性もシミュレーションの結果、出てきたという。

 「バランスの取れたシステム運営をしていく上で、直接競争の発生しない分野では各社と共同でシステムを構築することも選択肢の1つだと思います。共通バックエンドシステムの構築については、構想段階ですが可能性を探っています」(髙村氏)

 この構想は、自前でバックエンドシステムを持っているネット証券企業にとっても魅力的なものに映るかもしれない。日々膨大なバッチ処理を実行する巨大な基幹システムを維持しなくてはならないからだ。

 ただ、パブリッククラウドを活用するわけにはいかない監査情報を含む情報を処理、蓄積するシステムなので、クリアすべき条件は多い。さらにいえば、リスクも高くなる。共同で構築しても各社でコストをどう負担していくか、構築したシステムをどう管理していくかなどの問題もあり、簡単ではないという。

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