カギはAPIとマイクロサービス--Bluemix開発コンテストに見るシステムの未来

怒賀新也 (編集部) 田中好伸 (編集部) 2014年09月18日 07時30分

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 日本IBMは9月12日、5月21日から開催していた開発コンテスト「IBM Bluemix Challenge」の受賞者を発表した。最優秀賞を獲得したのは、「iOS 7」に搭載される近距離無線技術「iBeacon」を活用したクーポン発行システム「BLUECOUPON」を開発した猪谷貴姿子氏だ。

 BLUECOUPONは、小売店舗などに来店した顧客のiPhoneやiPadにiBeaconを活用してQRコード付きのクーポンを送信するアプリ。顧客が利用したクーポン情報をグラフ形式で可視化するとともに、店員のiPadと顧客のiPhoneやiPadの間でチャット、電話といったコミュニケーションを取ることもできる。

猪谷貴姿子氏
BLUECOUPONを開発した猪谷貴姿子氏

 優秀賞を獲得したのは、自動翻訳機能付きチャットルーム「Chirpbox」を開発したPセ21G(Kamal Kassem Youssef氏、岸田博幸氏、長堀哲氏)と睡眠アドバイザー「Sleeff」を開発したAclab team a(小木曽里樹氏、川岸卓司氏、青木拓也氏、古川聖也氏)の2チームだ。

 Chirpboxは、複数の言語が使用されるチャットルームで、ユーザーが指定した言語に翻訳してチャットの内容を表示するというアプリ。APIを活用している。Sleeffは、リストバンド型デバイス「Jawbone UP」とカレンダー情報を連携させて、睡眠の時間や質に加えて、体力から最適な睡眠時間をアドバイスするというアプリだ。このアプリもAPIを組み合わせて活用している。

 副賞として、最優秀賞は「MacBook Pro」1台、優秀賞は掃除ロボット「Roomba」1台が贈られる。

短期間でAPIを組み合わせ

 Bluemixは、オープンソースソフトウェア(OSS)のPaaSフレームワーク「Cloud Foundry」をベースにしたPaaS。この6月から正式に公開されている。Bluemix Challengeは、普及と利用拡大を図るために開催されたコンテストだ(普及促進では「Bluemix 女子会」も開いている)。5月21日~8月12日にアプリケーションやサービスを募集していた。

 応募されたものは、専務執行役員でソフトウェア事業本部長のVivek Mahajan氏など日本IBMの6人と外部の5人で審査した。外部審査員となったのは、東京海上日動システムズ顧問の横塚裕志氏、日本電信電話(NTT)研究主任の谷口展郎氏(サービスイノベーション総合研究所ソフトウェアイノベーションセンタ)、富士通 SI技術本部 チーフアーキテクトの薮田和夫氏、早稲田大学理工学術院教授の山名早人氏、「Publickey」編集長の新野淳一氏の5人だ。

横塚裕志氏
東京海上日動システムズ 顧問 横塚裕志氏

 当初は「応募されるのだろうか」(新野氏)と心配していたが、結果として259作品の応募があった。応募された259のうち、日本IBM側がまず14に絞り、その後で外部審査員とともに5つに絞ってから最優秀賞と優秀賞を決定した。「1カ月ほどの短期間で開発されたものもあり、中には4日ほどで作ったものもあった」(横塚氏)

 選考に残ったものを見ると「ガリガリ書いたものが少なかった」(新野氏)という。新野氏は「短期間でAPIを組み合わせたものが多く、今回のコンテストの趣旨を理解している」と印象を語った。

 応募されたものは企業の業務システム向けはあまりなく、「スマートフォンをメインにした個人向けのものが多かった」(横塚氏)という。最優秀賞を獲得したBLUECOUPONも、店舗と顧客のエンゲージメント拡大を狙ったアプリだ。

 Sleeffについて、谷口氏は個人的意見と前置きした上で「スケジュール情報とウェアラブル端末をAPIで組み合わせたものであり、IoT(Internet of Things)的」という印象だ。APIの組み合わせということで言えば、Chirpboxもそうだ。

 Chirpboxは、既存の2種類の翻訳エンジンのAPIを組み合わせたものだ。例えば、こちらの言葉はすべて日本語で表示されるが、向こう側には英語で表示されるというチャットである。翻訳エンジンをいちから開発するのは大変だが、翻訳エンジンのAPIを組み合わせたという点で現代風と言えるだろう。

 「これがチャットという短い文章だから(翻訳の)精度がいいと思う。チャットは短い文章なので、(翻訳の)間違いも表面化しない」(薮田氏)

 最優秀賞と優秀賞の2つの印象として新野氏は「裏でAPIを連携させるというシンプルなアプリケーション」と表現。使うことで話題が広がりそうなアプリケーションとも付け加えた。谷口氏も「誰かが使うことで広まっていきそうなアプリケーション」とその可能性を示唆した。「“こういうのがあるといいな”と思えたことが実際に動いている」(谷口氏)

 Bluemix Challengeを見ると、今後の企業の情報システムが変わるのではないかという予兆を感じることができる。今やファイアウォールの外側にあるクラウドに企業のシステムが載るのは当たり前になりつつある。スマートフォンをはじめとしたスマートデバイスの普及も、企業を取り巻く環境を変えつつある。企業の情報システムは将来、どのように変わっていくのだろうか?

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