筆者はインターネットを1980年代から使っている。筆者にとってインターネットアプリケーションと言えば、「Archie」「Gopher」「Veronica」など、読者の皆さんの大半は聞いたことのないプログラムだった。そして、ウェブの登場とともに全てが変わった。
筆者は、一般の読者向けにウェブについて書いた最初のライターであり、ウェブはまさに一般的なものとなった。筆者が言いたいのは、1993年の時点でウェブのユーザー数は数十万人だったはずだ、ということである。現在、Facebookだけで10億人を超えるユーザーがいる。
初期の時代にウェブを使うのは本当に大変だった。インターネットを実際にサポートしているOSは「UNIX」だけだった。「Windows 3.1」を使ってウェブに接続したかったら、「Trumpet Winsock」と呼ばれるプログラムを使う必要があった。それを正しく設定するのは、本当に面倒な作業だった。
インターネット接続を確保するだけでも、大変な頭痛の種だった。90年代初頭にはインターネットサービスプロバイダーはごくわずかしかなかった。そして接続できたとしても、「高速」なV.32bis、28.8Kbpsの接続が実現すれば幸運だった。そして「Lynx」や「WWW」といった初期のウェブブラウザも、Winsockほどは厄介なものではなかったとはいえ、決して簡単ではなかった。
そして、1993年初頭にイリノイ大学アーバナ・シャンペーン校にある米国立スーパーコンピュータ応用研究所が「Mosaic」をリリースした。これは、初のグラフィカルウェブブラウザとして人気になった。Mosaicは大きな前進だったものの、愛用しているのはテクノロジ愛好者だけというプログラムだった。
しかし、Mosaicを開発したMarc Andreessen氏は、初の商用ウェブブラウザの1つである「Netscape」の開発に着手する。「Windows」「Mac」、そしてUNIXの「X Window System」で利用できるこのブラウザが全てを変えた。現在では、インターネット接続の設定はまだ簡単ではないが、それができる人なら誰でも、血や汗や涙を流すことなくウェブを使うことができる。
この画面はわれわれの今の感覚では美しいとは言えないかもしれないが、Netscapeはウェブをテクノロジ愛好者だけではない一般大衆にもたらした初のブラウザとなった。
Netscapeは単なるブラウザ以上の存在だった。現在われわれが知っているようなインターネットは、RSSフィードやダイナミックな「JavaScript」を使ったウェブページといったNetscapeのイノベーションから生まれた。Netscapeが1995年に上場するまでには、同社はスタートアップから10億ドル規模の企業へと、かつてない速度で成長していた。
わずか数年ではあったが、Netscapeはインターネットを支配していた。しかしそれは長く続かなかった。
インターネット人気に慌てたMicrosoftは、巻き返しを図った。Microsoftの初のブラウザである「Internet Explorer (IE) 1.0」は、「Spyglass Mosaic」をベースとしたもので、率直に言ってあまり良いものではなかった。Netscapeがウェブブラウザ市場シェアの80%を占めている状況にあって、Microsoftは何としてでも勝とうと決意した。