国立大学法人 茨城大学は、災害時のBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)強化を図ってコンテナ型データセンターを導入、全学生・教職員約9000名が利用する教育研究・校務用システム「電子計算機及びネットワークシステム」のサーバをはじめとする機器群を校舎内のサーバ室からコンテナ内に移設し、10月からプライベートクラウド基盤として本格的に利用を開始している。
茨城大学では、2011年3月に発生した東日本大震災で校舎の停電により全システムが停止した経緯がある。5日間にわたって受験生や学生への情報発信や教職員間の一斉連絡の手段が途絶えるなど業務の継続が困難となった。さらに、被災した校舎の安全性を確保して破損した空調システムを復旧するまでに1カ月を要し、その間、システムを本格稼働できなかった。
今回のコンテナ型データセンター導入は、BCPの強化に向け、文部科学省の東日本大震災復興関連事業として実施された。
採用されたのは、日立の屋外設置式コンテナ型データセンター「フレキシブルデザインコンテナ」。サイズやレイアウトを柔軟に設計でき、今回は床面積約46平方メートル(幅約8.3m×奥行約5.5m)、高さ約3.9mのサイズに設計した。
耐震性については、国土交通省の「官庁施設の総合耐震計画基準」において大震災後にも継続的に機能が確保できる施設重要度係数1.5で設計しており、東日本大震災と同程度の地震が発生した場合にも、内部の機器およびシステムに影響が出ない運用環境を実現した。
さらに、校舎などとは独立させてコンテナ型データセンター用の自家発電設備を設置し、校舎への電力供給が停止した場合にも、システムの運用継続を可能とした。
また、日立の空調環境コンサルティングサービス「AirAssist」を活用。サーバや空調機のレイアウトを最適化したことなどにより、PUE値(Power Usage Effectiveness:データセンターやサーバ室のエネルギー効率を示す指標の1つで、データセンター全体の消費電力をIT機器の消費電力で除した値。PUE値が1に近づくほど、エネルギー効率が高いことを表す)は日立の試算で約1.29と優れたエネルギー効率を実現している。
茨城大学では今後、各部署で管理しているシステム群をコンテナ型データセンターに移行するなど、さらなるBCPの強化に取り組んでいく。また、コンテナ型データセンターの用途を拡大してプライベートクラウド基盤として活用。学生や教職員へ、最先端のITを取り入れた安定的なシステム環境を提供することで、教育研究や校務の質の向上を図っていく。