金融アナリスト2名が示す数字が正しければ、AppleとIBMの提携は2014年に締結された中で最も実入りの多い取引かもしれない。JefferiesのアナリストSundeep Bajikar氏とMark Lipacis氏は米国時間10月17日、投資家向けメモの中で、この提携がAppleに4200万もの新しいユーザーをもたらす可能性があると述べた。
数字に換算すると、2015年には「iPhone」や「iPad」が何百億ドルという規模で売れることになる。iPadは特に法人分野での販売を増やすことが課題だった。
ここでおさらい。IBMとAppleは7月に提携を発表し、iPhoneとiPadを対象に100を超えるエンタープライズ用途のカスタムアプリを開発すると述べた。ターゲット市場は、小売、医療などの垂直市場だ。
またIBMはデバイス管理、セキュリティ、分析といったIBMのクラウドサービスを「iOS」向けに最適化する。iPhoneとiPad用の各種アプリはIBMのソフトウェアやクラウドスタックを使って構築する。
Appleは第3四半期決算を発表した際、Fortune 500企業の99%が社内でiPadを利用していると述べた。しかし、企業全体での浸透率はたったの20%だという。
「この状況から解放されるためには、より良いGo-To-Market戦略を打って出る必要がある。IBMは明らかに(この戦略に)合致する」と、Appleの最高経営責任者(CEO)のTim Cook氏は当時の決算発表の電話会議で述べている。
提供:Apple、IBM
新規ユーザーの獲得について楽観視するレポートが出たからといって、四半期の販売数が急増するものと期待してはならない。
Bajikar氏とLipacis氏は、Appleは「IBMとのビジネス提携の強みを活かして、iPhoneやiPadの販売を徐々に伸ばすだろう」と述べている。
IBMも提携で大きな恩恵を受けることになりそうだ。20日にクラウドコンピューティングなどの開発技術に注力する方針が十分でないことが明らかになるや否や、同社の株価は午前の取引で8%近く下落した。同社は2015会計年度の通期決算で、営業利益目標を達成できないだろうとも述べている。
AppleとIBMの提携は、手をつけられていなかったエンタープライズ市場への両社の参入を促し、明らかに両社にWin-Winの関係をもたらすという。
Jefferiesのレポートには、他にも興味深いことが書かれていた。
- Appleがハードウェアに施す少しずつの変更では、既存の企業顧客にアップグレードさせるには不十分だと、アナリストたちは述べる。それよりも、デバイスに何が搭載されるかの方が重要という。「ハードウェアの強化よりもむしろ、新しいビジネス向けアプリの開発に投資することで、Apple端末のインストールベースを拡大できる。エンタープライズはそのような潜在可能性をもつ分野だとわれわれは見ている」と両氏は述べる。
- 収益構造に関する詳細も書かれていた。Cook氏は提携の発表当時、収入源について議論していないと述べていた。レポートでは、金銭面をどうしたら提携がうまくいくかについても言及している。「エンタープライズアプリの開発者は今後もAppleに手数料を支払わずに企業に直接販売することができると、Appleは述べていた」。これは、つまりAppleがアプリが購入されるたびに課金していた30%の手数料がゼロになることを意味する。
- 「Appleが重要な売り上げを得られない状態が続くであろう一方で、IBMがこの分野にうまく対応するだろう」「この状況で利するのはAppleではなく、そのような収入をそれほど必要としていないIBMだろう」(同レポート)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けer for Between thに編集したものです。