三国大洋のスクラップブック

3年かけて生まれ変わった「ティム・クックのアップル」

三国大洋 2014年09月22日 06時30分

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 Businessweekが、久しぶりにAppleに関する特集記事を掲載している。

Tim Cook Interview: The iPhone 6, the Apple Watch, and Remaking a Company's Culture

 いわゆる巻頭記事の扱いで、表紙を飾るTim Cookの写真――「『喜色満面』というのはこういう表情を指すのだろう」と思える笑顔がすべてを物語っているような内容の記事である(表紙写真の上には「Tim Cook's Apple」という大きな文字が躍っている)。

 具体的な中味は、その見出し――「Tim Cook Interview: The iPhone 6, the Apple Watch, and Remaking a Company's Culture」に示されている通りのもの。

 新製品やサービスのことなどはすでにいろんなところで報じられていると思うが、3番めの企業文化やそれに関連する人事絡みの事柄の中には「やはり関係者に直接取材を許された者にしか書けないだろうな」と感じられる話も少なくない。そういう事柄を中心に今回はいくつか目についた点を書き出してみる。

 Cookは、米国時間9月9日にあった製品発表イベントの直後から、いろんな媒体に顔を出していた。大手テレビ局ABCの看板ニュース番組「World News Tonight」でメインキャスターも務めるDavid Muirとのインタビュー(発表会場で行われた)には、めったに表に出てこないJony Iveとともに答えていた。


More ABC news videos | Latest world news [Apple Watch: Will It Revolutionize the Personal Device?]

 また、ベテランジャーナリストCharlie Roseとの対談番組(PBSとBloombergで放映)は前編後編に別れる長いもので、特にCookの熱のこもった、時には雄弁な感じさえする語り口が印象的というか、かなり意外に感じられるものである。

 6月のWWDCの際に、AppleもCook個人も「印象が大きく変わった」という声がいろんなところで上がっていたが、今回、具体的な製品やサービスを表に出せたことで、Cookも肩の荷が少し軽くなり、ようやく一息ついている、という感じも、これらのインタビューからは伝わってくる。

社内のサイロを崩した3年間

 「Apple本社にあるSteve Jobsのオフィスが、そっくりそのままの形で残されている」「Jony Iveらが“Apple Watch”のデザインに着手したのは約3年前、Jobsがなくなって間もないころのことだった」など、Businessweekの特集記事には、前述のインタビューで明かされていたような話も含まれている。

 一方、CookがJobsから経営を引き継いだ当時のAppleは、さまざまな部門がバラバラに活動し、それぞれの利害が衝突することも少なくなく、それらを調整して全体をリードしていけるのはJobsだけ……といった状態で、社内には「並外れて強力なトップがいなくなって、こんな組織形体でやっていけるのか」という疑問の声もあったとか、トップ交代からしばらくの間は各部門やチーム同士の縄張り争いがひどく、誰も大きな決断を下せない状態が続いた、といった話は、おそらく今回初めて見聞きするものと思える。

 長くJobsのそばにいて、自分がJobsのようには成り得ないことをよく承知していたはずのCook――“Jobs=ヒマワリ、Cook=月見草”といったイメージがあった覚えもあるが、この記事でも、Cookが最高執行責任者(COO)に就任した当初、「スタートレック」に登場するミスター・スポック(理詰めで喜怒哀楽を顔に出さない、カーク船長の取り巻き)と外部から揶揄されていたこともあった、という逸話がある――が、カリスマ経営者への過度の依存に伴うリスク、あるいはそうした人物の不在によって生じる組織の弱点といったものを人一倍強く感じ取っていたというのは当然ありそうなことに思える。

 そうして、まずはそうした危うさを少しでも減らすべく、組織の改革(と従業員の意識改革)に取り組んだというのも自然なこと。ただし数万人規模に膨れ上がった大企業での話だから、エネルギーの大半はプランの執行の方に注がれていたはずで、つまりは「言うは易く行うは難し」ということになろうか。

 この組織改革を進める上で大きなマイルストーンのひとつとなったのが、例のScott Forstallの更迭とその後に続いた幹部の職掌変更で、それを機にJony Iveがハードウェアとソフトウェア両方のUIを管轄することになり、ソフトウェア開発は、今年6月のWWDC基調講演で大活躍していたCraig Federighiが一手に引き受けることになった……というのはすでによく知られたことと思う。

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