米Hewlett-Packard(HP)がサーバ事業として注力しているワークロード特化型の製品展開は、システム統合の時代に逆行してサイロ型システムを増やしてしまうことにならないか。日本ヒューレット・パッカード(日本HP)のサーバ事業責任者に聞いてみた。
4つのワークロードに注力するHPのサーバ戦略
日本HPの手島主税 執行役員 エンタープライズグループ事業統括HPサーバー事業統括本部長
日本HPが10月24日、インメモリデータベース「SAP HANA」ベースの垂直統合型システム「HP ConvergedSystem」の新製品を発表した。新製品の内容については関連記事を参照いただくとして、発表会見では、同社のサーバ事業責任者である手島主税 執行役員 エンタープライズグループ事業統括HPサーバー事業統括本部長が、ワークロード特化型サーバの製品展開に今後も一層注力していくことを強調していた。ここではこの点について、一言もの申し上げたい。
HPは今年から、ワークロード特化型サーバの製品展開に力を入れている。ユーザーが求める多様なワークロードにきめ細かく対応するのが狙いだ。具体的には、サーバ製品群を「コアビジネスアプリケーション」「ミッションクリティカル環境」「仮想化/クラウド環境」「ビッグデータ/HPC/ウェブスケールアウト」といった4つのワークロードに分け、それぞれに特化した製品を展開するというものである。
4つのワークロードそれぞれの内容については、8月13日掲載の本連載「HPが示唆するサーバベンダーの生きる道」で紹介しているので参照いただくとして、このワークロード特化型の製品展開について、筆者は最近、ユーザー企業のIT担当者から疑問の声を聞いた。それは「ワークロード特化型サーバを社内の各部門で個別に導入してしまうと、サイロ型システムがどんどん増えていくことになるのではないか」というものだ。
サイロ型システムにはならないと言うHPの見解
そうならないように統制を図るのがIT部門の役目ではあるが、この疑問は一理あるのではないか。そこで、今回の会見でこの疑問を手島氏にぶつけてみた。すると同氏はこう答えた。
「ワークロード特化型と表現しているが、HPはワークロードに特化した専用機を投入しているわけではない。それぞれのワークロードに対応したサーバを求める顧客ニーズが高まっている中で、共通の標準化されたアーキテクチャに基づいたサーバに、それぞれのワークロードに適した要素技術を注入してきめ細かく対応していこうというのがHPの戦略だ。ベースはオープンであり、一元管理も可能なので、サイロ型システムが増えるようなことにはならないと考えている」
さらに同氏によると、HPでは現在、ワークロードにきめ細やかに対応するコンピューティングリソースとして「Compute」と呼ぶ概念に基づいた新しい仕組みを開発しており、これが実現すればサイロ型システムへの懸念は完全に解消されるという。ちなみにComputeが具現化するのは2019年とのことだ。
ただ、現実としてユーザー企業のITシステムは異なるアーキテクチャが混在しているケースが少なくなく、IT部門の統制力も企業によってまちまちだ。Computeのような新しいリソースプールの仕組みが利用できるようになるまでは、ベンダー側もユーザー側もサイロ型システムにならないように十分注意する必要があるのではないだろうか。