前編に続いて、世界屈指のハードウェア製造都市となった中国・深センの歩みと成長ぶりを紹介する。
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Huawei(ファーウェイ)はその後、電話機器関係で世界第2位に、そしてスマートフォン製造で世界第3位の企業になるまでに成長した。さらに、年間売上高が390億ドルにも達するこの巨大企業は、企業向けテクノロジの主要サプライヤーになろうとしている。
2平方kmの敷地面積を誇り、ガラスとクロムがまぶしい同社の広大なキャンパスは、華強北にある小さな店舗群と同じ世界に存在しているとは到底思えない。写真撮影禁止のテストラボが収容されているビルは「ホワイトハウス」とさえ呼ばれている。
商業地域「華強北」には、ほぼ全域にわたってコンピュータのハードウェアとソフトウェアの店が軒を連ねている。
提供:Steve Ranger/TechRepublic
とは言うものの、他の大手ハイテク企業のキャンパスと比べると、それほど差はない。ただ、亜熱帯の気候や環境と、新規雇用者が2年間にわたって安価に生活できるよう施設内に住宅を用意している企業などほとんどないはずだ。食事付きの最高の部屋は1泊30ポンド程度(約5500円)であり、基本的な部屋は12ポンド程度(約2200円)となっている。こうした施設が用意されているのは、深センにおける住居費の高騰を反映してのことだ。シリコンバレーの一部の雇用主も見習うべきだろう。
筆者がHuaweiのキャンパスに到着したのはお昼時であったため、社員食堂は混雑していた。およそ4万人の従業員がこのキャンパスに毎日出社している。従業員は午前8時30分から仕事を始め、通常は午後5時30分で仕事を終える。昼の休憩時間には、机の下にしまってある簡易寝具で寝る従業員もいれば、仲間同士のエクササイズプログラムに参加する従業員もいる。
同社の創業者は滅多にインタビューに応じないし、Huaweiには幹部が6カ月単位で最高経営責任者(CEO)の職を輪番で担当するという、他にあまり例を見ない制度がある。IT業界では、自社が平凡な企業ではなく、個性と魅力にあふれていることを示すために、著名な人物がCEOになる場合がしばしばある。欧米社会から見た場合、このような複数リーダー制によって企業の性格が把握しづらいものになってしまっていると言えるだろう。
Huaweiは世界第2位のネットワーク機器会社である。しかし、同社の機器を購入していない通信事業者がまとまって存在している。それらは米国のプロバイダーだ。
その理由は、Huaweiのネットワーク機器を使用することで「米国の安全保障上の国益を損う」可能性があるという、極めて批判的な内容の報告書を米下院の情報委員会が2012年に公表したためだ。同社と中国政府との関係をめぐって大きな懸念がうずまいていたのだった。
Huaweiはこれを含むさまざまな主張を一貫して否定するとともに、同社が独立した民間企業だと断言してきている。しかし、この懸念は払拭されるに至っていないため、同社は世界的に大きな成功を収めてきているにもかかわらず、米国市場への進出は思うように進んでいない。