日本IBM、日本ヒューレット・パッカード(日本HP)、SAPジャパンが、新年明けて早々に発表した首脳人事には、新任者の経歴に共通点がある。その意味するところは何か。
年明け早々に発表された外資系IT大手3社の首脳人事
日本IBM、日本HP、SAPジャパンが1月5日、首脳人事を発表した。新年明けて早々に外資系IT大手の首脳人事がそろうのは過去に記憶がない。
日本IBM社長に就任したポール与那嶺氏
日本IBMは1月5日付けで、取締役副社長だったポール与那嶺氏が代表取締役社長に就任した。前代表取締役社長のMatin Jetter氏は米IBMのグローバルテクノロジーサービス部門の責任者とともに、日本IBMでも取締役会長を兼ねる。
与那嶺氏は2010年5月に日本IBMに入社し、製造や金融など幅広い業務部門の営業責任者を務め、2014年10月からは成長戦略の推進役を担ってきた。Jetter前社長のもとで営業改革を推進し、業績向上を果たしたのが評価されたようだ。
日本HP社長に就任した吉田仁志氏
日本HPは1月1日付けで、前SAS Institute Japan代表取締役社長の吉田仁志氏が代表取締役社長に就任した。日本HPでは2014年3月末で小出伸一氏が社長を退任した後、米HPシニアバイスプレジデントでアジア太平洋・日本地域を担当するJim Merritt氏が日本法人社長を兼務していた。吉田氏の社長就任に伴い、Merritt氏は本来の職務に専念する。
Merritt氏は吉田氏を新社長に起用した理由について、同社が1月8日に開いた記者会見で「数々の企業を成功に導いた実績がある。ハードウェア、ソフトウェア、サービスの幅広い経験がある点も高く評価した」と語っている。
SAPジャパン会長に就任した内田士郎氏
SAPジャパンは1月1日付けで、前プライスウォーターハウスクーパース取締役会長の内田士郎氏が代表取締役会長に就任した。内田氏は代表取締役社長の福田譲氏と同様、独SAPアジア太平洋・日本地域担当プレジデントのAdaire Fox Martin氏にレポートする。福田氏の役割に変更はないとしている。
Martin氏は内田氏の会長就任について、「グローバルな視点に立った深いコンサルティングの見識を有する内田氏が加わって、日本の経営体制はさらに強化された」とコメントしている。
ITに一層求められるビジネスコンサルティングの視点
与那嶺氏と吉田氏と内田氏。実はこの3氏の経歴には共通点がある。それは、3氏ともビジネスコンサルティング会社を経ていることだ。
与那嶺氏は1979年に公認会計士としてKPMGピートマーウィックに入社し、1999年にKPMGコンサルティング(後のベリングポイント)社長、2006年に日立コンサルティング社長兼CEOを歴任した。
吉田氏は1995年に米Cambridge Technology Partnersに入社し、1997年にはその日本法人であるケンブリッジ・テクノロジーパートナーズを開設して社長に就任した。同氏は、米スタンフォード大学大学院でコンピュータサイエンス修士、米ハーバード大学ビジネススクールで経営学修士の資格を取得している。
内田氏は日米で公認会計士の資格を持ち、1980年にピートマーウィックミッチェル会計事務所に入社。1999年にPwCコンサルティング(当時)取締役常務執行役員、2005年にベリングポイント社長、2010年にプライスウォーターハウスクーパース社長を歴任した。
こうした経歴の3氏が同じタイミングで外資系IT大手の首脳に就いたのは、企業のITシステムがこれから、クラウド、モバイル、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術からなる“第3のプラットフォーム”へ移行していく中で、ビジネスコンサルティングの視点が一層求められるようになってくることを意味しているのではないだろうか。
果たして3氏がこれからどのような経営手腕を発揮するか、注目しておきたい。