たとえばつい先日には、近くの大学の大学教授が、中関村で研究用にパソコンを購入しようとしたところ、3200元(約6万4000円)のパソコンを倍額の6400元(約12万8000円)で買わされ、学生やネットユーザーから教授が馬鹿にされるというニュースがあった。この手の新しいニュースと、中関村の現状をセットにした報道は何年も報道されている。
中関村に人がいないわけではない。中関村の電脳街から僅か500m南方の海淀黄庄というところには、中関の名がつくパソコンとは無縁のショッピングセンターが数棟あり、人の流れは活発だ。
中関村でみる新しい広告は、パソコンではなくキャリアの4Gの広告だ
北京ほど酷くないが、上海や深センから内陸の昆明まで、空きテナントが目立ってきている。一方で小都市においては、数碼城ができたというニュースが報じられている。地方都市を見ている身、その解釈は「地方都市でこれからデジタル製品が盛り上がる」ではなく、「遅れて投資し数碼城を完成させたので、作った以上PRしている」とした方がいいだろう。地方都市でもオンラインショッピングが普及する現在、そんなに人は入らないだろう。
中関村の名を冠したIT系ポータルサイト「中関村在線」も危機的状態だと噂されている。このサイトは、中国を代表するITサイトだ。スタッフ数は立ち上がり当初は、100人程度だった。それでも多いが、その後スタッフは増え続け、200人がテクニカルスタッフ、200人が編集者、100人が営業という体制となった。危機的状況となったのは、パソコンからスマートフォンへの移行の最中だからというのが理由の1つだが、それだけではない。
中関村在線は、新製品のレビュー記事とともに、中国各都市の製品の最安値を紹介する価格比較サイトの側面もあった。以前は中関村の製品価格は安くて魅力的だったので、このサイトの利用価値は非常に会った。だが中関村をはじめ、テナント料に苦しめられる中国全土の電脳街の各ショップは、製品価格でオンラインショッピングに太刀打ちできず、中関村在線の価値もなくなる。
年始に中関村在線の危機説が流れたものの、長く使い続けたユーザーもいるはずなのだが、ネットユーザーの反応は薄い。
現在の北京の空気は悪いが、5年前には青空が見えていた
- 山谷剛史(やまやたけし)
- フリーランスライター
- 2002年より中国雲南省昆明市を拠点に活動。中国、インド、アセアンのITや消費トレンドをIT系メディア・経済系メディア・トレンド誌などに執筆。メディア出演、講演も行う。著書に「日本人が知らない中国ネットトレンド2014 」「新しい中国人 ネットで団結する若者たち 」など。