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「Spam Nation」ブックレビュー:サイバー犯罪のエコシステムを暴く

Wendy M Grossman  (ZDNet UK) 翻訳校正: 沙倉芽生

2015-02-20 07:00

 20年前は、スパムがどこからやって来るのか、またそのビジネスモデルはどういったものなのか調査したとしても、その調査に危険が伴うことはなかった。「スパム王」として知られていたペンシルバニア州のSanford Wallace氏に電話をかけ、ペニス用の薬やダイエットアシスタント、悪徳詐欺などの広告に実際反応する人がいるという事実に驚いていたくらいのものだ。法律やインターネットサービスプロバイダーの技術的行動主義に対する意見を投げ(ついでに、メールのフィードで邪魔されることは言論の自由を侵害すると信じている自由意思論者の意見も添えて)、それでおしまいだった。


Spam Nation: The Inside Story of Organized Cybercrime - From Global Epidemic to Your Front Door ● 著者:Brian Krebs ● 出版社:Sourcebooks ● 252ページ ● ISBN 978-1-4022-9561-4 ● 16.99ポンド

 時は過ぎて2005年。Brian McWilliams氏は著書「Spam King(スパム王)」にて、スパムがどれほど儲かるビジネスかを調べるためスパマーの経歴を調査した。その結果McWilliams氏は、スパムを撲滅しようとしている人たちが、スパマーと同じくらいしつこい人たちであることを知った。

 とはいえ、McWilliams氏はロシアを訪れることもなかったし、身の危険にさらされることもなかった。それが、「Spam Nation: The Inside Story of Organized Cybercrime - From Global Epidemic to Your Front Door」(「スパム国家: 世界規模での大量発生から個人宅までを狙う組織的サイバー犯罪の内情」の意)を執筆したBrian Krebs氏は、ロシアも訪問すれば、危険にさらされる羽目にも陥った。

 ペニス用の薬の広告はどれも同じに見えるが、その裏には異なるタイプの人物が存在する。その昔、裏にいたのは反社会的な馬鹿者どもだったが、今ではボットネットを借り、ソーシャルメディアに精通し、盗み出した個人情報を活用する犯罪者がバックについている。現在のスパムは、メールアドレス搾取やボットネットプログラミングといった分野で高い能力を持つ専門家らによって巧妙に作られているのだ。

 Krebs氏は、ワシントンポスト紙に14年間所属した人物だ。不和になったインタビュー相手をロシアまで追いかけていた際に、自身のセキュリティと安全規制をすべて犠牲にしていたことに気づく。すべては原稿のためだった。Krebs氏は、ハッキングされたデータベースも入手。そこには薬のスパムに反応した顧客リストもあった。

薬戦争の始まり

 この話はどんどん大きくなっていく。「Spam Nation」にてKrebs氏は、「薬戦争」について語っている。この戦争では、対立するロシアのスパム王らが自らの領域を巡って言い争いをし、互いのシステムをハッキングし、敵を調査するよう警察に金を渡している。

 経済状況もこの戦争に火を注いでいる。広告をクリックするのは、たいてい処方された薬が高価な米国に住むアメリカ人だ。ただしKrebs氏によると、何が送られてくるかは運任せだという。多くの場合、実際に注文した薬がインドや中国の下請け会社から送られてくるが、そうでない場合、幸運なら増量剤の入った薬が、不運なら毒が送られてくる。

 Krebs氏は最後に、Stefan Savage氏らによって現在調査継続中であるスパムのエコシステムについて説明している。どんな職業でもそうだが、非常に優秀なトップクラスのスパマーは大儲けしているが、たいていのスパマーは利益を出すのに苦労しているという。

 こうした話の内容と登場人物は、スリラー映画にも匹敵するものだ。本の中でも(第1章を除いて)詳しく描かれている。

 2014年頃の犯罪の裏の状況を知る必要がないのであれば、この本は娯楽として読めばよい。そして、勃起不全治療薬シリアスの広告を作成するためにどれだけ多くの人が関わっているのかを知って驚くがよい。きっとそんな広告メールが届いても、瞬時に削除されるような広告であるにも関わらずだ。

この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。

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