Appleの最高経営責任者(CEO)を務めるTim Cook氏は先週、Goldman Sachsのカンファレンスで、AppleがIBMと提携したのは、自分がエンタープライズ分野におけるAppleの限界を悟ったからだ、と打ち明けた。
2014年に発表された「前例のない」AppleとIBMの提携からもたらされた成果はまだそれほど多くない(これまでのところ、両社は特定の垂直業界向けのエンタープライズアプリを10本発表しただけだ)。しかし、両社の提携がこれから生み出すさまざまな成果については、多くのことが語られてきた。
特別なものを作るのには時間がかかる。筆者は両社については、疑わしい点も好意的に解釈しようと思っている。AppleのCEOのTim Cook氏がそもそも提携を実行した理由も説明しているのだから、なおさらだ。
先頃、サンフランシスコで開催されたGoldman SachsのTechnology and Internet Conferenceで講演を行ったCook氏は、AppleとIBMがどうすれば互いに助け合えるのかを詳細に説明した(iMoreの厚意により、筆記録の抜粋を掲載)。
Cook氏は、「IBMはさまざまな垂直業界を深く理解している。Appleには、そうした知識はない」と述べた。IBMには、現場のリソースや販売チームなど、Appleにはないものがたくさんある。逆に、Appleには、「iPhone」や「iPad」などIBMが製造しない素晴らしいデバイス群、さらに「iOS」というモバイルOSがある。少なくともCook氏によると、iOSはカスタムアプリの開発が容易だという。
Cook氏は、「『どうすればこれを実行できるのか』と考え始めたとき、われわれは、自分たちには不特定多数の垂直業界に関する知識が不十分なこと、そして、IBMのように現場で働く人間がいないことに気づいた」と説明した。さらに、Appleには、それらの垂直業界向けのカスタムアプリを開発するエンジニアもおらず、どのようなアプリを開発する必要があるのかを判断する専門知識もなかった。
同氏は再び、iPadに既にあるアプリの例として生産性アプリを挙げたが、本当の意味で「人々の働き方」を変えるためには、AppleとIBMはさらに踏み込んで個々の垂直業界向けカスタムアプリを開発し、彼らのニーズに対応して、従業員が今よりもはるかに効率的に働けるよう支援していく必要があるだろう。
「看護師向けのツールやパイロット向けのツール、客室乗務員向けのツール、販売員や銀行員向けのツールに言及し始める段階が来たら、アプリが必要になる」(同氏)
Cook氏によると、AppleとIBMのエンジニアリングチームは「極めて相互補完的」で、「相性も良好」だという。筆者は以前、IBMの幹部陣からも同様の話を聞いている。
「エンタープライズ分野はまだ、コンシューマー分野ほど大々的にモバイルに移行していない。今もデスクに張り付いている人が大勢いる。信じられないことだ」(同氏)
Tim Cook氏がこれまでに予想してきたものの中には、後に現実となったものがたくさんある。そのCook氏がIBMとの提携の成果は「本当に意味深い」ものになると考えているのだから、皆さんが今後の展開に期待を抱いても問題はないと思う。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。