女川町災害公営住宅建設事業を手掛ける一般社団法人女川町復興公営住宅建設推進協議会は、事業における電子記録債権を活用した資金支援スキームを三菱東京UFJ銀行(BTMU)と三菱総合研究所(MRI)とともに提供するにあたり、工事進捗管理システムにパブリッククラウドサービスとタブレット端末を活用している。
システム構築を手掛けた日本ビジネスシステムズ(JBS)と、開発環境などを提供した日本マイクロソフトが3月4日、発表した。
東日本大震災の被災地における災害公営住宅の建設では、建設事業者への建設費用の支払が全戸引渡時に一括で実施するため、事業者は通常の公共工事で採用される前払金などを受け取ることができず、人件費や資材購入費などを各自で立て替える必要があることが、工事の遅れにもつながっていた。
建設現場イメージ
そこで、BTMUとMRIでは、女川町災害公営住宅建設事業において、女川町の信用力を背景とした電子記録債権を利用することで、事業者が工事進捗状況に応じて実質的な出来高払いを受けられる資金支援スキームを実現し、2014年3月から提供している。
この資金支援スキームを実現するためには、建築事業者が現地の工事進捗状況を、出来高確認者(MRI)に正確に報告し確認を得るプロセスを、物件ごとに実施していくための工事進捗管理システムが必要となる。
MRIでは、現地の建築業者と遠隔地の出来高確認者を結ぶ工事進捗管理システムにはクラウドサービスとデバイスを駆使する必要があると考え、複数の選択肢を検討した結果、マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure」と、Windows 8.1搭載タブレットを採用することにした。
採用の理由は以下の通り。
デバイスの選択肢
同事業では隣接した複数物件を同時に建設していくことになるため、タブレットで個々の物件を撮影し位置情報とともに記録する際に、より正確な位置情報を記録できる高精度GPSモジュールが必要だった。Windows 8.1搭載タブレットは他社OSのタブレットでは接続できなかった高精度GPSモジュールが接続可能であったこと、また、デバイスメーカー、フォームファクター、周辺機器オプションなど、さまざまな用途に応える幅広いデバイスの選択肢があることを評価した。
アプリケーションとインフラ
建設事業者と出来高確認者の円滑なデータのやりとりを実現するアプリケーションの開発、実装や、強固なセキュリティ、国内での災害復旧対応(ディザスタリカバリ)を考えると、東日本や西日本の日本データセンターを利用でき、開発環境が整っているAzureが適していると判断した。また、将来的にMicrosoft Lyncを使ったビデオ会議などのシステムを追加利用することも視野に入れている。
システム構築では、1カ月で専用アプリケーションとAzure上のウェブアプリケーションを完成させ、工事進捗管理システムもプロジェクト開始から約3カ月で完成と、短期間での構築を実現した。システムは提供開始から1年の間に、計16棟の災害公営住宅の建設で活用されている。
本システムを用いた、本事業における資金支援スキームの流れは以下の通り。
(マイクロソフト提供)
・建設事業者が、Windows 8.1搭載タブレットと専用のアプリケーションを使用して、物件の進捗に応じたエビデンス(物件の写真とGPSによる位置情報)をAzure上に提出
Windows タブレットの利用イメージ(マイクロソフト提供)
・出来高確認者(MRI)が、建設事業者から報告された物件情報、写真、位置情報を確認
工事進捗管理システムの管理者画面サンプル(イメージ画像。実際のものとは異なる)(マイクロソフト提供)
・出来高確認者(MRI)から債権管理サービス合同会社(SPC)に出来高情報を伝達
・SPCが建設事業者に工事の進捗に応じた電子記録債権を振り出し