バーチャルリアリティ(VR、仮想現実)はこのところゲームとの関連で話題になっているが、技術が成熟するにつれて、さらに多くの用途が出てきている。VRは多くの業界でさまざまな使われ方をしており、多くの場合は職業訓練や、利用者に概念や体験を伝える新たな方法に関わっている。
この記事では、バーチャルリアリティを活用している9つの業界を紹介し、それらの業界でどのようにVRを日常生活に取り込もうとしているかを見ていくことにしたい。
医療
バーチャルリアリティは、医療の分野でもさまざまな応用がある。そのうちの1つは、(これは実際にはそれほど新しいものではないが)VRを心理療法で用いるというものだ。たとえば、ルイスヴィル大学の精神科医は、社会不安や飛行恐怖症、会話恐怖症、高所恐怖症などを持つ患者の認知行動療法にVRを利用している。医師がコントロールされた環境を用いて、患者をシミュレーションに触れさせ、どのように感情と向き合えばよいかを指導するのだ。
また、医学論文誌のFrontiers in Neuroscienceは、2014年に、手足を失った人の幻肢痛の治療にバーチャルリアリティを利用する研究についての記事を掲載した。この治療では、脳からの神経信号を読み取るセンサを使い、患者にバーチャルな手足を使うゲームをプレイさせる。この治療は患者がコントロールを取り戻すのに役立つ。たとえば、手を握りしめているように感じている患者が、VRの中で自分が手をコントロールしているのを見ると、手から力を抜く方法を習得するのに役立つ。
エンターテインメント
エンターテインメント業界は、おそらくバーチャルリアリティが最初に大きな影響を与える業界の1つであり、その中でも最も分かりやすい用途の1つがゲームだ。しかし、他にも利用法はある。たとえば「Oculus Cinema」では、ユーザーは映画館を独り占めして映画を見ることができる。映画館業界は、間違いなく興奮していることだろう。
大音量の音楽やがさつなファンが好きでない人は、VRコンサートが気になるところだろう。Paul McCartney氏のVRアプリでは、ユーザーはステージでのピアノ演奏を近くに浮かんで眺めることもできるし、Paulが演奏する「007 死ぬのは奴らだ」を(聴力低下を心配せずに)スピーカの近くで聞くこともできる。Coldplayも、2014年末に同様のVR体験をリリースしている。
自動車業界
Ford Motor Companyは現在、同社のVR研究所Immersion Labで、顧客が同社の車がどのように感じるかを調べるのにバーチャルリアリティを使っている。ここでは「Oculus Rift」のヘッドセットを使って、自動車の内装や外装を高解像度で見られるようにしている。さらに、たとえば懐中電灯のようなVR体験の中で使える小道具的なツールを開発し、暗がりの中で車の周囲を見て回る体験をシミュレートしたりしている。これによって、新モデルの物理的なプロトタイプを実際に製作することなく、いきなり製品開発プロセスに進むことができる。