ノークリサーチは5月20日、2015年中堅・中小企業におけるネットワーク関連のIT投資規模と今後の投資意向の調査を実施し、分析結果を発表した。SDN(Software Defined Network)などに代表される大企業やデータセンター用途での新たなネットワーク活用は、中堅・中小企業にはまだ波及していないという。
上のグラフは年商5億円以上~500億円未満の中堅・中小企業におけるネットワーク関連の投資規模を算出したもの。中堅、中小企業全体の平均成長率(2014年~2019年)は0.7%にとどまり、基幹系システムやスマートデバイスなどの他分野と比べると成長率はやや低い値となっている。
大企業向けやデータセンタ用途ではSDN(Software Defined Network)などに代表される新たな取り組みが活発化しているが、現段階においてはそうした新たな動きが中堅、中小企業におけるネットワーク関連投資に直接的な波及効果を与えるまでには至っていない。
中小企業への無線LAN訴求は今後も有望
ここでのネットワーク関連投資とは、社内に設置するスイッチ、ルータ、ファイアーウォールといったネットワーク機器の購入費、保守費、インターネットアクセス回線利用料、VPNの利用料、ネットワーク関連機器の監視・運用に関する各種サービスの利用料を指す。ただし、サーバやPCなども含めた運用管理の一環としてネットワークも管理対象としている場合の費用は「運用管理システム」に含まれる。
こうしたネットワーク関連投資を、投資対象項目ごとに算出した年平均成長率は、上のグラフの通り。無線LANについては、比較的高い値を示していることがわかる。
特に年商帯の低い中小企業層における成長率が総体的に高くなっており、スマートデバイスの社内アクセスポイントを兼ねた無線LAN環境の整備といった訴求が有望になってくるものと予想される。
同一業種でも投資意欲の異なる企業が混在
中堅・中小企業向けのネットワーク関連ソリューションの訴求においては、企業規模や業種別に見た場合にネットワーク環境整備が不足していたり、品質改善を望んでいるセグメントを見つけ出し、そこに対してアプローチをしていくことが直近での確実な施策になってくると考えられる。
本調査では、「ネットワーク関連の相談先がどのように変化していくのか」「今後の投資対象となるネットワーク機器/サービスはどれか」といった質問を実施し、今後の投資意向を分析している。
下記のグラフは今後の投資意向に関する集計・分析の具体例として、「建設業」と「運輸・通信業」を対象に尋ねた結果の一部をプロットしたもの。
運輸・通信業は建設業と比べて「WANサービスをさらに高品質なものに変更する」の回答割合が高いが、同時に「WANサービスをさらに安価なものに変更する」の回答割合も高くなっている。つまり、同じ業種の中でもWANサービス関連の単価を引き上げる顧客層と引き下げる顧客層が混在していることになる。
運輸・通信業に限定した場合の市場規模推移は、WANサービスの成長率が他の業種と比べて高い値となっており、投資に意欲的な顧客層が運輸、通信業全体の成長をけん引する形となっている。「同じ業種の中でもネットワーク関連投資に意欲的な企業層をいかにとらえるか」が重要といえる。