千葉大学医学部附属病院は、電子カルテなどを含む病院情報システムでネットワーク仮想化技術を導入、2014年6月に本格稼働した。24時間365日稼働が求められる病院情報システムで高可用性と管理の柔軟性を両立したネットワーク環境を実現したという。日本アバイアが2月12日に発表した。
同病院は1978年から病院情報システムを導入している。日本で最も古くから病院情報システムを運用する病院の一つであり、そのデータの蓄積量も世界トップレベルという。電子カルテを中心とした病院情報システムが24時間365日稼働していることから、ネットワークが絶対に止まらない高可用性と、病院が再開発中であることからネットワークの設定変更に対応できる柔軟性を重視したネットワーク環境が求められていた。
現行のネットワークは、耐障害性を重視したことから複雑な設計となっており、障害が発生した場合に問題の原因をトレースすることが難しく、なかなか原因に辿りつけなかったという課題を抱えていた。
仮想LAN(VLAN)ネットワークに対する構成変更の影響がネットワーク全体に波及していまい、ネットワークが止まってしまうリスクを伴うため、作業担当者は都度作業で心理的な負担を含め、設計から変更、立会いまでの稼働時間などの物理的な手間を必要としていた。病院が再開発中であることからネットワーク環境の設定変更が多く、容易にネットワークを移設、変更できる柔軟性と可用性を両立したネットワークが求められていた。
既存のネットワークシステムは、機器障害時の基幹ネットワーク全体への影響を軽減し、耐障害性を上げるために経路分散や負荷分散を図る設計を目指していたが、従来システムでの機能や設計の限界で本来希望しているレベルにまで適用できず、耐障害性の向上が急務となっていた。
こうした課題に対し、ネットワーク仮想化技術「Avaya Fabric Connect」を新たに導入した。Fabric Connectは、SDNに対応するイーサネットスイッチの「Virtual Services Platform 9000」やトップオブラックスイッチの「Virtual Services Platform 7000」、エッジスイッチの「Virtual Services Platform 4000」などで構成される。
Fabric Connectでは、万が一の障害に対し最短の迂回経路に通信を誘導できるためネットワークインフラの信頼性を担保し、事業継続性の向上につなげられるという。これまでのように複雑なプロトコルを意識する必要がなく、かつネットワークトポロジの制約を受けることのない、シンプルなネットワーク構成をデザインできるため、ネットワークの障害要因を軽減できるとしている。
今回の導入では、ネットワーク機器はリング構成を交えたフルメッシュ型のスイッチ構成にすることで通信経路を多く確保したという。コアスイッチが2台とも止まってしまっても、ネットワーク全体には全く影響を及ぼさない構成を実現できたとしている。
エンドポイントでのVLAN変更でのプロビジョニング機能、経路スイッチの挿入や撤廃での高速な経路収束で自律性の高いネットワークシステムとなったことから、運用性を向上させたと説明。電源工事の都合でネットワーク機器の一部を遮断するといった場合でも、この新環境では工事が必要な棟のみネットワークを止められ、障害の範囲も限定的に抑えられるという。
Fabric Connectでスイッチへの設定作業はSPB(Shortest Path Bridging)で構築されたネットワークのエッジスイッチのみとなり、コアスイッチへの設定は不要になった。ネットワークを短時間で容易に変更できるようになり、将来起こりうるさまざまなネットワークへの需要にも柔軟かつ迅速に対応できるとしている。