「小売業の課題は性別や年齢、国籍と関係ない」――。
米Teradataの国際部門で小売業界担当ディレクターを務めるKatarina Hansson氏は、5月18日に日本テラデータが開催した勉強会で小売業界の状況を解説し、データ駆動型マーケティング(データドリブンマーケティング)のトレンドを説明した。「日本の小売業の課題は欧州や米国と同じ」(Hansson氏)
同氏はTeradata以前に、ファストファッションで有名なアパレルメーカー大手H&Mで12年、日本にも進出して注目される家具販売店IKEAで13年、マーケティング業務を担っていた。IKEAではECの立ち上げやロイヤルマーケティングにも携わっていた。
Katarina Hansson氏
Hansson氏は、小売業がデータドリブンマーケティングを実践すべき背景として、消費者のメディア(デバイス)接点の多様化、専門店やECサイトなどの台頭による競争の激化を挙げる。こうした環境の変化に対応するためには、個店の品揃えと店舗環境を最適化し、データ分析によって顧客の行動を把握、理解し、満足度を最大化することが重要であると説く。なお、米国よりも欧州のほうがデータドリブンマーケティング導入が進んでいるとのことだ。
冒頭にあるように小売業が抱える課題については「国境がない」という。各国の小売業者は、「シームレスな顧客体験の提供」「実店舗の最適化」「オンラインとリアル店舗の特性を考慮した商品構成」「柔軟な価格設定」「需要反応型のサプライチェーン管理」「支払い手段の多様化」「効率的なオペレーション」といった新たな課題に直面しているとHansson氏は説明する。
中でも興味深いのは、オンラインとリアル店舗の特性を考慮した商品構成だ。Hansson氏は、「同じ商品であっても、どちらの店舗をメインに販売するかで売れ方が異なる」と指摘する。
オンラインで商品を購入する人の多くは「自分が気に入った商品は価格が高くても購入する」傾向があることから、「需要反応型のサプライチェーン管理で、消費者がいちばん必要なタイミングで販売すれば、同じ商品でも異なる価格を設定できる」との見解を示した。
データドリブンマーケティングで大きく変化するのは、販売モデルである。Hansson氏は、「企業が主導権を握っていた従来の『オペレーション中心主義』か、販売サイクルの中心に顧客を据える必要がある。そして、『パーソナライズされたサービスや情報』を『顧客の状況に応じた最適なメディア(デバイス)』に対し、『そのブランドだけでしか得られないようなユニークな体験を提供する』ことで、他社との差別化を図ることが重要だ」と説明する。
日本の小売りはSNSを重視すべき
では、消費者側の購買行動はどのように変化しているのだろうか。Hansson氏は興味深いデータを示した。小売専門の調査会社である英Planet Retailが2014年に公開した「シッョピング体験と嗜好」によると、日本の消費者の35%は、購入前の情報収集ツールとしてSNSを利用し、23%の消費者がウェブサイトのパーソナライズ機能の影響を受けて小売業者を選択しているという。
Hansson氏は「日本の消費者と欧米の消費者の行動に際立った違いはないが、あえて挙げるとすれば、上記の2点であり、日本の消費者は購入前にSNSで情報収集をする割合が高い。裏を返せば、小売店がSNSを重視し、戦略的に活用することで消費者にアプローチできる」と指摘する。
英Planet Retailが2014年に公開した「シッョピング体験と嗜好」の日本での統計。世界10カ国、1万5000人が対象に調査(日本テラデータ提供)
かねてからTeradataでは、PCやスマートフォンといった“デジタル”と実店舗の“リアル”のすべてのチャネルにおいて、一貫した顧客体験を提供する必要性を説いている。そのためには、データソースを一元管理し、複数の分析手法で消費者の行動パターンや相関関係を可視化するプラットフォームが必要であると訴求してきた。
さらにHansson氏は、今後は需要を予測できる「探求型分析」がマーケティングのカギになると語る。