自ら開発して需要を予測--データ分析でサプライチェーンを最適化する英テスコ

田中好伸 (編集部) 2013年12月26日 12時39分

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 英国を本拠地とする小売り大手のTescoは、データを分析することでサプライチェーンの最適化を図っている。

 売上高で米Walmart、フランスのCarrefourに続く第3位のTescoの従業員数は53万以上。年間の売上高は前期比1.3%増の723億ポンドで営業利益は同13.0%減の34億ポンド(2013年2月期)。

 20年ぶりの減益といわれているが、723億ポンドという売上高は日本円にして約11兆2000億円。日本のスーパー1位のイオンが5兆6853億円、セブン&アイが4兆9916億円であることを考えると、その巨大さが分かるだろう(2013年2月期)。

 現在、Tescoが進出しているのは、欧州のアイルランドやポーランド、ハンガリー、チェコ、スロバキア、トルコ、アジアの韓国やタイ、中国、マレーシア、インドの計12カ国(かつて日本にも上陸したが、実質的に撤退)。売り上げの66%は英国で稼いでいる。


天候も加味した需要予測

 英でTescoが運営する店舗数は3000以上、大規模店舗に並ぶ商品数は3万以上。稼働している物流拠点は23、1週間に配送されるケースの数は約6000万と、これらの数字がTescoの巨大さを裏付けている。これだけ規模が大きい小売業では、そのサプライチェーンの最適化は大きな意味を持つことになる。

 Tescoでサプライチェーンシステムなどを開発するDuncan Apthorp氏によると、サプライチェーンの最適化の最初のプロジェクトでは5000万ポンドを削減することに成功したという。「ビッグデータプロジェクトは非常に高いリターンをもたらす」(Apthorp氏)

 Apthorp氏が関わっているプロジェクトでは、キャンペーン効果の向上、天候が売り上げに及ぼす影響を考慮した需要予測、物流拠点での在庫削減、店舗現場での最適化などがある。

 天候の変化は小売業の売り上げに強く影響するのは、どこの国でも同じだが、Apthorp氏によれば、気温が10℃上がると売り上げは、バーベキュー用の肉で25%増、レタスで45%増、コールスローで50%増、芽キャベツで25%減になるという。英Tescoが出荷する生鮮食品は1600万ケースであり、これは「店舗によっては競合の2倍近く」(Apthorp氏)という。

 生鮮食品に影響を与えるのは天候だけではない。平日と土日でも売り上げは異なるし、子どもたちが通う学校の夏休みや冬休み、イースターなどの季節の行事も売り上げに当然影響する。サラダの売り上げで見ると「曜日なら土曜日がよく売れる。何らかのキャンペーンでも売れる。4月のイースターは売り上げが落ちる。学校が休暇になると売れる」(Apthorp氏)

 5~7月の夏が始まる頃に前の週から一気に暑くなると、週末に家庭でバーベキューが食べられるようになり、それに連れてサラダの売り上げも伸びるという。この5~7月に「サラダの売り上げが前の週から15%も伸びることがある」。だが、気温が同じ状態が続くと、バーベキューを食べるということはなくなり、サラダの売り上げが伸びることもなくなるという。

 そこでTescoでは、曜日やキャンペーン、休暇などのデータを需要予測モデルに組み込んで、IBMのメインフレームでシミュレーションしている。シミュレーションは過去5年間の売り上げのデータが組み込んであり、年に2~3回、気温が変化するデータを組み込んだシミュレーションするとともに、1日に3回リアルタイムの天候状況を組み込んでシミュレーションする。これらのデータから需要予測を立てている。この需要予測に使われるソフトウェアは「Tesco内部で自分たちが理解できることを優先してCOBOLで開発した」(Apthorp氏)という。

 これらの需要予測結果は生鮮食品のサプライヤーが自由に見ることができる。サプライヤーにとっては、Tescoの店舗で何がどれだけ売れるのかという予測が重要になるからだ。

 「大きな店舗ではサプライヤーが700、置かれる商品数は1万2000。地域の小さめの店舗でもサプライヤーは200、商品数は5000以下。生鮮食品のサプライヤーのリードタイムは、2日の商品もあれば7日に商品もあり、可変的でバラバラ。需要予測の結果からリードタイムや搬送方法に基づいてサプライチェーンを最適化している。生鮮食品のロスを75%減らした。最適化で1800万ポンドを削減できた」(Apthorp氏)

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