ITが日々進化を続け、市場がさまざまな局面で複雑化している。物流も大きな影響を受けている。そのような環境の下で、企業の生産を支えてきたSCM(Supply Chain Management)も変化を求められている。
SCMの最新動向とともにこれからのSCMはどうあるべきなのか。ドイツのSAPのLine-of-Businessソリューションで、SCMを担当するシニアバイスプレジデント、Hans Thalbauer氏に聞いた。
市場が複雑化、ニーズは変化、従来のSCMにみえる限界
--SCMはいまどのような時期を迎えているのか?
SAPのLine-of-Businessソリューションで、SCMを担当するシニアバイスプレジデント、Hans Thalbauer氏
SCMを再考すべき時期が来ている。技術の進化により世界的に新たな潮流がみられ、市場の状況が大きく変動するなか、物流の領域はいっそう複雑さを増している。このような条件の下では、当事者は相反する目的を設定せざるを得なくなっている。要するに高い顧客サービスが求められる一方、在庫はできる限り少なくすることが要求される。
同様に、輸送コストは最小化と定刻通りの配送の徹底化、品質の最高水準とコストの最小化を迫られている。今のところ担当者たちは1日たりとも最適化はできていないのではないか。SCMの担当者は日々「例外」にその都度対応しているようなものだろう。
このように、いわば例外が一般化しているような状況でSCMはリアルタイムで例外に即応できるようでなければならない。実際、それができている企業は新しいビジネスモデルを構築しているようだ。多くの企業は「どうすれば最近のニーズを満たすことができるのか」と考えているところだろう。
--企業のニーズはどう変わってきているのか?
現在の主要なニーズは例えばトラックに積み荷を満載して運ぶというようなことを効率化したいといったものではない。オンデマンドの配送、例えば発注して2時間で荷物が届くというようなことがニーズとして台頭してきている。企業のニーズは粒度の細かいものとなっている。ここでは即応性が主題となっているわけだが、企業側もまたそれを迅速に把握しなければならない。
需要に応じて店舗などに適切な商品を適時に配送する。これはニーズの正確な理解なしには実現できない。実際サプライチェーンを考え直して策を講じている企業は良い業績を上げている。当社の調査によれば、そのような企業は、予定した時間通りの配送の実現については37%の改善、在庫管理費用では89%の改善を達成している。