SAS Institute Japanは、大幅に不足していると指摘されるデータアナリストを育成するために教育プログラム「SAS Analytics U」を国内でも包括的に推進する。統計学を中心としたデータの基礎を理解する人材を増やす底辺拡大、データ分析の手法を理解して活用する学生や教員を育成する専門性の向上、コミュニティの構築という3つの側面から人材拡大を進める。
Analytics Uは学生や教員、社会人がデータ分析を学べる無料プログラム、専門性を持った人材を育成する教員や学生を対象としたプログラム、コミュニティ支援という3つの側面から実施されている。今回、教員と学生を対象としたプログラムの価格を従来に比べ最大で89%値下げし、利用者拡大を狙う。
SAS Institute Japan 執行役員 マーケティング本部兼ビジネス推進本部 本部長 北川裕康氏
SAS Institute Japan 執行役員 公共・公益営業本部長 阿部浩也氏
「当社が実施している認定プロフェッショナルの数は、米国が断トツに多く、それ以外の国はほぼ横並びだが、日本は中国にも追い抜かれ、ほぼ1000人程度しか存在しない。ビッグデータ関連の仕事が増えている現状を踏まえ、認定プロフェッショナルを含め専門知識を持った人材を増やしていきたい」(執行役員 マーケティング本部兼ビジネス推進本部長の北川裕康氏)
日本はデータ分析発展途上国
SASでは日本のデータ分析に関する状況を「日本には統計の専門学科が大学に存在していない。McKinseyの調査によれば、2008年時点で統計学や機械学習の高等専門教育を受けている大学卒業生は3400人にとどまる。この数字は米国だけでなく、中国、インド、英国などにも大きく水をあけられており、日本はデータ分析発展途上国となっている」(執行役員 公共・公益営業本部長の阿部浩也氏)
今回、データアナリストを増やしていくために、ワールドワイドで実施しているAnalytics Uを国内でも包括的に推進する。すでに2014年から無償で提供している統計ソフトウェア「SAS University Edition」は27万2000回ダウンロードされた。統計やデータマイニングなどをSaaS型で無料で利用できる「SAS OnDemand for Academics」には3万6000回アクセスがあった。
「昨年だけで無償のeラーニングコースには4万5000回のアクセスがあり、ビデオチュートリアルには100万回近いアクセスがあった」(北川氏)
統計知識を持つ人材を増やすための活動は、引き続きUniversity EditionとOnDemand for Academicsを無償で提供。「これは底辺を広げる目的で提供している。学生や教員などだけでなく、統計に興味をもつ社会人にも利用してもらうことを目的としている」(阿部氏)
一方、教員と学生向けに有料で提供するプログラム「SAS Education Analytical Suite」については、「尖った人材を育てていくことが目的」としている。「統計は通常のIT教育とは異なり、サイエンス的要素を学ぶ必要がある。大学で勉強を始めないと間に合わない」(北川氏)との観点から学生への教育を充実させる。
Education Analytical Suiteはすでに750校に導入されているが、今回大幅に価格を値下げする。プログラムが全学校での契約、学部での契約、教授や研究室の単位での契約、個人など複数の契約形態が用意されているが、最も値下げ率が高い教授や研究室の単位での契約の場合、従来価格の120万円が13万円と89%の大幅値下げとなっている。最も値下げ率が低い学校全体で利用者500人までの契約でも240万円が116万円へと52%と、50%を越える値下げ率となっている。
コミュニティについては、現在はオフラインのユーザー会への参加となるが、現在は英語版のみのオンラインコミュニティの日本語での提供も検討している。
Analytics Uで提供される主要機能モジュール