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未来のデータサイエンティストを育成--日本IBMなど、中学生向けにビッグデータを授業

遠山恵子 (インサイト)

2014-11-13 13:19

 日本IBMは11月11日、非営利法人(NPO)の企業教育研究会(ACE)と共同でビックデータの活用を学ぶ中学生向け授業プログラムを開発したと発表した。このプログラムで“未来のデータサイエンティストの育成”を推進していくという。

 日本IBM社会貢献部長の小川愛氏は、授業プログラムを開発した背景として、IBMが取り組んでいる社会貢献活動を解説した。

小川愛氏
日本IBM マーケティング&コミュニケーションズ 社会貢献部長 小川愛氏
藤川大祐氏
特定非営利活動法人企業教育研究会 理事長 藤川大祐氏(千葉大学教育学部教授)

 「活動を行う上で大切なのは“IBMらしさ”。金銭的な支援ではなく、IBMの持つ技術やテクノロジ、従業員の持つ技術や能力を提供する。地域社会と接点を持つことは企業活動の上でも非常に良い効果を生んでいる。できるだけ多くの従業員に社会貢献活動や個人ボランティア活動を行ってもらっている」

 IBMの社会貢献活動での重点分野が「教育改革・学術の発展に対する支援」だという。現在、小中学校では企業やNPOなどにより幅広い分野の授業が提供されるようになってきている。学校側には、教育現場では見つけにくいコンテンツの授業を生徒に提供できる利点があり、企業側には自社で開発している製品やサービスを経済活動だけでなく広く社会に還元できるというメリットがある。

 IBMでは、特に科学やテクノロジといった理数系の教育やグローバル人材育成などに力を入れてきた。ビックデータやアナリティクスといった今日的なテーマについても、新しい教育プログラムが必要と考え、今回の開発にいたったという。「データサイエンティストという新しい職種への可能性を早いうちから認知してもらうというキャリア支援の意味もある」(同氏)とした。

 具体的な授業プログラムについては、教材開発を手がけたACEの理事長で、千葉大学教育学部教授の藤川大祐氏が説明した。藤川氏は“授業を研究し、新たな授業を開発する”ことが専門という。「社会の変化に対応した新しい授業をどうやってつくるか。教育の方法も内容もイノベーションしていきたい」(同氏)とした。

 ACEは2003年に発足。千葉大学、静岡大学、兵庫県立大学の3つに拠点を置き、“学生の力で企業と学校を結び、学校に新しい授業プログラムを学校に提供する”プロジェクトを実施。現在では、さまざまな企業と連携して年間300~400回の授業の提供をしている。

 今回、IBMと共同開発した授業プログラムは、「データを活用して選挙結果を予測する」という題材。藤川氏は「教育の現場でも、統計やデータ分析の大切さは教えるようになってきたが、教育内容は初歩的で、実社会での活用シーンとの乖離が大きい。子供たちにデータサイエンティストという新しい職業があることを教えることを含めて、義務教育の段階で、何らかの対策は取れないかと考えた」と開発の狙いを説明した。

立候補者であるエリー・ベネットさん 立候補者であるエリー・ベネットさん
※クリックすると拡大画像が見られます

 授業プログラムは生徒数3万5000人、7~12年生(中1~高3)がいる未来都市の中等教育学校で生徒会長選挙が行われるという設定。「選挙は、実際にデータ分析を活用する場で、生徒たちにとっても公民の授業で勉強した内容と重なる。人数は、授業時間内にデータを把握しやすい最低限である数万人規模とした」(藤川氏)

 選挙予測するのは新聞部で、顧問と部長、副部長、部員で構成される。実際に授業プログラムを受けている生徒たちは部員となり、架空のキャラクターである部長のミッションを解く。ACEの職員が進行役、顧問はIBMの従業員が務める。藤川氏は「エンターテインメント性の高いデジタル教材を使うが、実際に社会でデータ分析をしている人との接点を設けることで、キャリア教育の場になるようにした」と教材の工夫を解説した。

 選挙の候補者は3人で、数カ月におよぶ選挙戦を戦う。生徒たちには、序盤、中盤、終盤で3つのミッションが与えられる。最初のミッションは、過去3年間の支持者数調査の結果のグラフから共通点を見つけて、序盤戦を分析すること。2つめのミッションは、成績優秀者が優遇される不公平な学力別クラス分け制度を踏まえた上で、支持者の内訳から各候補者の支持層の傾向をつかむこと。3つめのミッションは、投票者未定(いわゆる浮動票)のアンケート結果と、過去のデータを用いて、どの候補者が優勢か予測すること。

 プログラムは、千葉大学教育学部付属中学校3年生の選択数学の生徒を対象にパイロット授業が行われている。「生徒へのアンケート結果からはに、データを見てじっくり考えるのが面白かったといった意見が多かった」という。

 今後の展開に関して、同氏は「ストーリー性のある演出によって、複雑な内容でも十分楽しく学べる演習を提供できることが分かった。数学の学習が社会につながるということを示すことで、学習能力や関心も高められる」と成果を強調した。

 2015年3月までに練馬区立上石神井中学校、港区立御成門中学校、四街道市立四街道中学校の3校で実施する予定。それ以降も年間10回程度の開催を計画しており、応募を広く受け付けている。

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