ビッグデータは、企業ITの世界だけではなく、テレビや新聞などの一般メディアでも話題になりつつある。それに伴って、ビッグデータという概念は(誤解を含めて)拡散し、その実像はぼやけている印象もある。
米OracleのビッグデータストラテジストであるPaul Sonderegger氏は、「リレーショナルなデータと非リレーショナルなデータを組み合わせ分析することで、データに新しい価値が生まれる」と解説。データを分析、解析することで企業の成長を支援できるとしている。
Sonderegger氏が務めるビッグデータストラテジストは、Oracleが提供する、横断的なビッグデータ基盤製品の推進と、顧客に与える価値の訴求に注力する役割という。同氏は、Oracleが2011年に買収したEndeca Technologiesでチーフストラテジストを務めていた。OracleがEndecaを買収したのは、Endecaが開発する製品が構造化データや非構造化データなどを探索、分析することに長けていたからだ。ここでは、改めてビッグデータの可能性について、Sonderegger氏に話を聞いた。
米Oracle ビッグデータストラテジスト Paul Sonderegger氏
生成される量が活用する量を上回る
「ビッグデータとは、テクノロジでもソリューションでもなく、特別なデータというわけでもない。日常に生まれる多くのデータをキャプチャし、活用する現象だと捉えるべきだ」――Sonderegger氏はビッグデータをずばりこう解説する。
注目を集めるビッグデータだが、「現在は活用が追いつかない量のデータが時々刻々と生み出されている時代だ。まず、これまではデータ化されていなかった人間の意見、思考が、FacebookやTwitterなどによってデータ化されるようになった。Facebookには1分当たり5億のコンテンツがアップロードされているそうだ。さらに、モノが生み出すデータがある。例えば航空機から出てくるデータ、これを記録することで生まれるデータの量は2011年と2016年を比較すると22倍になると予測されている。加えて、日常の運用のためにもデータが使われている。こうしたデータの生成量は、活用している量をはるかに上回っている」と活用という点では、まだこれからということになる。
データ分析への投資という点では、企業はこれまでビッグデータではなく、エンタープライズアナリティクスとしてデータウェアハウス(DWH)、ビジネスインテリジェンス(BI)プラットフォームなどにすでに莫大な投資を行っている。ビッグデータに新たに投資することになれば、さらに大きな投資を行うことになるのではないか? そう問いかけると、Sonderegger氏は次のように説明する。
「Oracleは企業がこれまで投資してきたエンタープライズアナリティクス、そして新たなデータ分析であるビッグデータと、全てのデータに対応し、少ない投資で最大の効果をあげることを可能にする。これまでは別々だったリレーショナルデータ、非リレーショナルデータの両方が組み合わさって動くことで、新しい価値を生み出すことになる」
Oracleではリレーショナルデータと非リレーショナルデータを組み合わせて新しい価値を生み出すために、(1)新たな疑問に迅速に回答を得る、(2)より多く正確に予測する、(3)データ貯蔵庫を作る、(4)データに基づいた行動を推進する――という4点を実践するべきだと提言する。
新しい疑問に迅速に答える事例としては、ある自動車電気機器のサプライヤーの事例を挙げた。同社の場合、34万に及ぶ複数のデータベースにわたる数百万台の自動車からのデータを使い、顧客から上がってくる疑問に迅速に答える体制を構築した。
(2)の正確な予測の事例は、Dellの事例が挙げられる。Dellでは顧客が利用するウェブサイトをその顧客に適した内容とするべく、データを活用。顧客がリアルタイムな意思決定を行うことを支援する、機械学習アルゴリズムを作り、1億3200万ドルの収益改善を実現したという。
「この仕組みを導入する以前は、BIツールなどを利用し、人手で顧客に最適な情報を提供してきた。しかし、人手による分析ではリアルタイムに、顧客の反応に基づいて対応を変化させることはできない。機械学習アルゴリズムでリアルタイムに顧客の反応に基づいた対応が可能となり、新しいリコメンデーションを実現することができた」