同時に、リトアニアの人件費は欧州連合の中でもっとも低い水準にある。Grafton Recruitmentの数字によれば、ヴィリニュスエリアのITマネージャーの年収は、2013年には2万7500~3万4300ユーロだった(ボーナスは含まれない)。3年から5年の経験があるJavaおよび.Netの専門家は、年収2万3000~2万9000ユーロであり、中クラスのテクニカルサポート技術者は、年収1万3700~1万6000ユーロだった。
Payscale.comの調査によれば、2015年5月時点のヴィリニュスのソフトウェア開発者が得ている年収は平均2万1690ドルであり、プロジェクトマネージャーは3万6000ドル、グラフィックデザイナーは1万1000ドルだった。リトアニア第2の都市であるカウナスでは、給与水準は首都よりも低い。
人口300万人のリトアニアは、人口当たりの数学、科学、技術分野の大卒者の数が欧州連合の中で1位となっている。「IT分野の教育プログラムへの入学者数は、2015年に40%拡大されたが、2016年までにさらに30%拡大される予定だ。さらに、国外に留学する若いリトアニア学生を対象とした人材誘致プログラムも間もなく開始される」とKatinas氏は言う。
Eurostatの最近のレポートによれば、リトアニアはヨーロッパ大陸でもっとも教育が進んだ国で、30歳から34歳までの国民における大卒者の割合が最も高い。リトアニアはヨーロッパの中でもっともオンライン学習が盛んであり、若手のプロフェッショナルは、ほぼ全員が英語を話せる。
政府の支援
ビジネス指向の考え方も、リトアニアが持つ資産の1つだ。「リトアニアでは、最短3日で企業を立ち上げることができ、法人税はこの地域でもっとも低い水準だ」とKatinas氏は話す。
企業は「スムーズに起業できるよう、さまざまな支援を受けられる」という。さらに同氏は、サービスプロジェクト開始から2年間の人件費の8%から15%、研究開発に対する法人税インセンティブ、および法人税の最大50%減税などの利点を挙げた。また、政府が従業員のトレーニング費用の最大50%を支援するほか、失業者を雇った場合、月当たり最大820ドルの補助を受けられる。また、若年労働者の人件費は、最大23.3%抑えることができる。
2015年には、リトアニアは世界銀行グループのDoing Business Index(事業のしやすさを表す国別ランキング)で、欧州と中央アジアで3位、世界では24位にランクインした。さらに、ヘリテージ財団が作成した年次報告書では、世界のIndex of Economic Freedom(経済的自由度を表す国別ランキング)で15位となっている。
2014年版のAT Kearney Global Services Location Indexでも、リトアニアは米国の1つ下の15位に位置している。この調査では、財務的な利点、人材のスキルや豊富さ、ビジネス環境なども考慮に入れている。欧州でリトアニアよりも上位にランクインしているのは、ブルガリア(9位)とポーランド(11位)だけだ。