サービスの成否を握るモバイルアプリの完成度
樋口氏の発案による新サービスは「おでかけノート」というもの。「Lococom」とは違い、店舗ではなく人が中心になる一種のブログサービスだ。ユーザー登録するとマイページに街を歩いた時に発見した撮影データや文章の投稿ができるようになる。
「おでかけノート」サービスには、散歩や旅行先に出会ったモノや場所の情報を記録したい人が集まり、コミュニティを形成していく。ユーザー登録した際に配布されるIDは、住宅情報サイトであるHOME'SのIDとしても使える。
IDを共有することはできるが、「おでかけノート」はあくまでも独立したサービスとして運営される。出かけ先で情報入力するわけだから、当然モバイルファースト。誰でも簡単に使えるモバイルアプリが成功の鍵を握る。
ただし、サービスインまで1カ月を切っている。情報サービス企業として恥ずかしくない一定のレベルに達したアプリを果たして作れるかどうか。樋口氏は、急いで4社のIT関連企業に声をかけた。開発要件としては、Ruby on Railsを開発フレームワークとして使い、運用プラットフォームはクラウドサービスであるHerokuを活用するというものだった。
「4社のうち、2社はRubyによる開発リソースが集められない、スケジュールが短すぎるという理由で辞退されました。当社は、PHPとRubyを開発言語として使っていて、今回のプロジェクトは、その後の運営の関係上どうしてもRubyでなくてはならなかった。もちろん、スケジュールも動かせない。残りの2社のうちで、提案内容とコストを検討し、依頼することにしたのがアピリオでした」
アピリオは、アプリ開発から大規模システム案件まで手掛ける企業で、「topcoder」というグローバルで81万人のエンジニア、プログラマなどが登録されているコミュニティを運営している。同社は、ネクストのプロジェクトに対し、このtopcoderを活用することを提案していた。
2週間でプロトタイプの完成「クラウドソーシング」で実現
樋口氏は、アピリオの提案で初めてtopcoderのことを知った。「クラウドソーシングを利用することに不安がなかったわけではない。しかし、このスケジュールで完成させるには新しい取り組みに挑戦するしかないと考えました」
3月3日にプロジェクトがキックオフし、15日には必要な機能をほぼ満たしたプロトタイプが出来上がった。その後、検証作業、社内確認を終え、無事に3月31日、「おでかけノート」はサービスインした。
樋口氏によると、開発プロジェクトスタート当初は、各段階ごとに途中経過をチェックする予定だったが、それをしていると、開発スピードが鈍ってしまい、間に合わなくなる可能性があることから、3月15日のプロトタイプ完成までは、チャットでアピリオの担当者と経過確認をするのみとなった。
「途中段階でのチャットによる確認をしているだけでも、なんとなく危なかっしいなというのは分かるものなんです。しかし今回のアピリオの担当者とのやり取りでは、ごまかしている部分や甘くなっている部分は感じられなかった」と樋口氏は語る。
アピリオ側の窓口であるシニア コンサルタントでコミュニティ アーキテクトの岩崎輝之氏は次のように語る。
「最初に渡していただいた、ワイヤーフレームの完成度が高かった。構成図や画面遷移図、画面仕様書などの粒度が細かく、整理されていました。そのため、topcoderで開発を依頼する際も開発段階を正確に区切ることができ、その後の作業の進展もスムーズにいったと思います」