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クラウドソーシングでシステム開発のアピリオ--70万人の智恵を生かす

大西高弘 (NO BUDGET)

2014-12-18 07:30

 クラウド上にコミュニティを形成して、さまざまな仕事を依頼したい側と、空いた時間を有効に使って実利を得たい側を結び付けるビジネスが日本でも開始され注目されている。

 こうしたクラウドネットワークを使った仕事の受発注の仕組みを使って、エンタープライズ系のシステム開発の仕事をコミュニティのメンバーに発注し、成果を上げている企業があると聞き、早速、話を聞くことにした。

 こちらの取材前の印象は、正直言って「どうやってそんなことで仕事が成立するのか」というものだった。部分的であっても、企業システム開発の仕事は、納期の制約や細かな注文、そしてなによりクオリティに対する厳しい目がついて回る。クリアしなくてはならないハードルがたくさんあるのだ。そういう類の仕事をクラウド上のコミュニティに発注して成立するのだろうか、と少し否定的な感触も持っていた。

米アピリオCEOのChris Barbin氏(左)と、アピリオ日本法人の代表取締役社長の藤田 純氏(右)
米アピリオCEOのChris Barbin氏(左)と、アピリオ日本法人の代表取締役社長の藤田 純氏(右)
 

 取材したのは、Appirio(アピリオ)という企業である。2006年に設立し、これまでにもCoca-Cola、Facebook、ニコン、PayPalなどを顧客とした仕事で成果を挙げているという。日本の顧客として代表的なのは日本郵政で、同社がSalesforce.comのソリューションを導入する際、Salesforce.comのパートナーとしてさまざまな開発にかかわった。

 アピリオは主にクラウド関連のシステム構築やアプリケーション開発を事業の柱としており、その仕事の依頼に対して、同社の持つネットワークを使って応募を募り、その成果を評価、顧客の納得するシステムの提供に努めている。

 同社は、仕事の依頼を受けると、その内容をコミュニティメンバーに公表して、期限を設け、懸賞付きのコンテスト形式で成果を募集するという。こういうやり方で成果が出るのは、モバイルアプリなどシステム全体からすると一部に過ぎないのではないか。そんな疑問を率直に投げ掛けてみた。

 来日した米Appirioの最高経営責任者(CEO)のChris Barbin氏は次のように話した。バービン氏はwebMethods、Borland Softwareでの要職を経て、Appirio創業時からCEOを務めている。

 「もちろん、部分的なシステム開発やモバイルアプリをコミュニティ上で要件を公表し懸賞付きのコンテストで成果を募るという方法を取ることもあります。しかし、われわれが取る方法はそれだけではありません。コンテスト形式ではなく、こちらからこの人物ならばという人を選んで、仕事を発注するケースもあります。成果を得る方法は、顧客の要望に合わせてわれわれがベストのものを選択します」

 また、開発するシステムの規模については、アピリオ日本法人の代表取締役社長の藤田 純氏が説明してくれた。藤田氏は、モトローラ、SAPジャパン、マイクロソフトなどのIT企業やアビームコンサルティングなどを経て、2013年から現職を務める。

 「当社の社員がSEとしてシステム開発に携わることもありますが、多くはコミュニティのメンバーに依頼してシステム全体の構築に協力してもらいます。世界中の優れたエンジニアにシステムの各所の構築の手伝いをしてもらうわけです。このケースでは、当社の社員は、ゼネラルコントラクターのような役割を果たし、最終的な成果をお客様に提供します」

 現在、日本でも各SI企業から仕事を受注し、説明されたような方法で成果を上げているという。それにしても、アピリオの持つコミュニティとは一体どのようなものなのか。

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