コンカーは7月27日、従業員の出張リスクを一元管理するSaaS「Risk Messaging」を日本市場向けに提供すると発表した。8月3日からサービスを開始する。
日本企業のグローバル化に伴い、海外での自然災害や大事故、テロといったグローバルな危機情報を日本企業の本社がいち早く把握し、現地従業員の安全確保のために迅速な対応を支援するサービス。2013年に同社が買収したconTgoのサービスをもとにしたもので、すでに欧米ではサービスを開始しているという。

コンカー 代表取締役社長 三村真宗氏
コンカーの代表取締役社長の三村真宗氏は「1990年代は冷戦構造もあり、リスクの予見がしやすかったが、多極化とテロの増加により、欧州の街角でもテロが発生するなど、リスクの予見が困難になり、企業での安全配慮義務の遂行が困難になっている」と企業がグローバル化を進める世界の状況を解説した。
「かつては国内勤務が中心であったが、出張先や勤務場所が世界中に拡散していること、“勝手予約”といわれるようにインターネットの普及に伴う予約が浸透し、かつての旅行代理店経由による集中管理に比べて、従業員の旅程管理が難しいといった問題が発生している。そのため、人事部門が出張先を十分に把握しておらず、危機発生時の対応に遅れが発生することになる。今回のサービスでは、あらゆる旅程情報の発生源から一元的に情報を把握。危機発生時でも迅速な対応が可能になる」(三村氏)
Risk Messagingは、デンマークのRisklineが提供する全世界を網羅したリスク情報や各国のリスクレベル情報を取り込むとともに出張管理SaaS「Concur Travel」や、旅行代理店が稼働させる、航空券やホテルなどの予約・発券システム“GDS(Global Distribution System)”と連携することで従業員の出張旅程情報の管理レベルを高度化できるという。
ネット予約などの契約旅行会社以外の予約に関しては、確認メールが従業員に送られたものを管理部門に転送するだけで、文脈を解析し、Concur Travel上で旅程情報を管理できるようになる。従業員のConcur Travelのチェックイン情報をもとに所在位置を確認できるという。

Risk Messagingは単独でも利用可能という
Risk Messagingでは、従業員に対して適切なタイミングでリスク情報を提供するほか、出張旅程や滞在場所のチェックイン情報に基づいて、本社は地図上から従業員の所在を確認でき、海外に渡航した従業員に対する避難や退避勧告などを迅速に指示できるという。企業ごとに、個別にルールを設定できるリスクルールエンジンも用意。リスク情報と旅程情報、人事情報を組み合わせて、リスクが発生した場合に、SMSメールで安否を確認することもできる。
たとえば、米中西部でハリケーンが発生した場合、人事情報や出張旅程情報をもとに、その地域に勤務している従業員や出張している従業員に対してのみリスク情報を提供するとともに、安否を確認する。爆弾テロ事件が発生した場合にも、所在情報をもとに、その時間帯に事件発生現場から一定の範囲内にいた従業員にだけ安否を確認できるという。安否確認のメールなどを配信する範囲は自由に設定できる。
米本社はRisk Messagingを自ら導入。5月12日にペンシルバニア州で発生したAmtrakの鉄道事故は死者8人、負傷者200人以上という規模になったが、事故は午後9時23分に発生した。事故翌日の午前8時5分までに事故現場周辺に19人の従業員がいることを確認。状況を確認するための安否確認メールを配信したところ、その1時間20分後の9時25分には19人すべての安全を確認して、経営陣に報告できたという。