少し前、Dick Bussiere氏はある発電所を訪問した。セキュリティ企業Tenable Network Securityのアジア太平洋地域主任アーキテクトとして、業務の一環で行ったものだ。そこで同氏が見たものは、ネットワークに接続され、モノの制御に使用されている「Windows 2000 Server」のマシンだった。
このOSは、サポート終了から5年以上経っている。
しかし、Bussiere氏は驚かなかった。「モノのインターネット(IoT)」の世界では、モノのライフサイクルはかなり長い。
Bussiere氏は米ZDNetのインタビューに対して、「モノのインターネットの『モノ』とは何だろうか?わたしのモノの定義は、人間に対して従来とは異なるインターフェース持つあらゆるコンピューティングプラットフォームだ」と述べている。
Bussiere氏の定義では、スマートフォンはデスクトップPCと同じように、従来型のインターフェースを持っていると考える。これは、スマートフォンが、操作しようとする人間とリアルタイムで直接的に相互作用するよう設計されているからだ。しかし、古いサーバによって制御されている、発電所のデバイスは違う。
「多くの場合、モノとは、設置した後は意識せずに済み、目的を達成するためにほかの存在と知的な形で通信を行うものだ。目的には、何かを監視する、スイッチを入れるなど、ユーザーが求めるあらゆることが考えられる」(Bussiere氏)
こういったモノには、発電所の中のデバイスのような古いものから、スマートカーやスマート冷蔵庫、「Nest」の温度計などさまざまなものがあるが、これらはファッションのために数年ごとに買い換えられたりはしない。何年にもわたって使われ、ものによっては10年、20年と継続して使用されることになる。
セキュリティに関心を持つ人の多くは、以前からモノのインターネットのセキュリティについて懸念を示している。
「そのような長いライフサイクルの間、誰がそれらのデバイスをメンテナンスするのだろうか。メーカーがパッチを当てるのだろうか。そもそも、それらのデバイスのライフサイクルが続く間、それらのメーカーは存続しているのだろうか。潰れてしまう場合も多いはずだ」とBussiere氏は言う。
「その長いライフサイクルの間、それらのモノは適切にメンテナンスされない可能性が高く、セキュリティの観点から適切にテストされることもおそらくないだろう」
これは、Androidのフラグメンテーション問題よりも深刻な課題だ。特に、電球や家庭内で利用する小物などの安価なデバイスについては問題が大きい。
「それらのデバイスでは、コストを下げるために、Linuxにせよ、(ソフトウェア)スタックにせよ、とにかく手近にある安いものが使われるだろう」とBussiere氏は話す。