「1999年、小さなアパートからスタートしたSalesforceは、2016年にはMicrosoft、Oracle、SAPに次ぐ世界で4番目に大きなソフトウェアベースの企業になる。時価総額は470億ドルと5年前の3倍になった。これらの成長はすべて顧客である皆さんのおかげだ。Salesforceの成長は、顧客のビジネスの成功とともにある。本日、ここに集う皆さんに最上級の感謝を伝えたい」
数万人の聴衆に向け、身振り手振りを交えながらこう語りかけたのは、Salesforce.comの最高経営責任者(CEO)であるMarc Benioff氏氏だ。
Salesforce.com CEOのMarc Benioff氏。基調講演の半分はステージから降り、聴衆の中を歩き回りながら話を続けた
Salesforce.comは、米国時間9月15から18日の4日間、カリフォルニア州サンフランシスコのモスコーニセンターで同社の年次プライベートコンファレンス「Dreamforce 2015」を開催した。13回目を数える今年の事前の登録者は16万人超と過去最高を記録。会期中は、400社以上のクラウドパートナーが1600超のデモを行う。同時に多くの顧客企業をもてなす、お祭り的な位置付けでもある。コンファレンス初日の基調講演でBenioff氏の“前座”を務めたのは、Stevie Wonder氏だった。
往年のヒット曲「You Are the Sunshine of My Life」「Overjoyed」を歌い上げたStevie Wonder氏
つながるすべてが「われわれの顧客」
基調講演でBenioff氏は、「IoT(Internet of Things:モノのインターネット)とモバイルデバイスが顧客のビジネスに革命を起こす」と主張。2020年までに750億のデバイスがインターネットに接続されるとの予測を例に挙げ、「IoTデバイスやスマートフォンから収集されるデータを分析することで、企業は顧客と1対1でつながることができる。これを実現しているのがクラウドだ。中堅小規模企業であっても、クラウドであれば、(大規模投資をしてシステムを構築しなくても)常に顧客との関係とつながっていることが可能だ」と訴えた。
ただし、「収集されるデータと活用するデータにはギャップがある」とBenioff氏は指摘する。「現在、分析されているデータ量は、(収集されている)全データの1%に満たない。そうしたギャップを埋めるためには、データを企業にとって価値ある情報に昇華させ、既存のCRM(顧客情報管理システム)と連携させるプラットフォームが必要だ。それが、IoTのプラットフォームである『Salesforce IoT Cloud』だ」(同氏)
Salesforce IoT Cloudは、リアルタイムにイベントを処理するルールエンジン「Thunder」を搭載し、SalesforceとIoTから収集される数十億のイベントを連携、分析できるプラットフォームである。今回のコンファレンスにあわせて発表された。Thunderにイベントの条件とロジックをあらかじめ定義しておくことで、アプリケーションを通じ、リアルタイムでのアクションをユーザーに促すことができる。
例えば、車載センサがドライバーの急発進や急ブレーキといった運転行動をデータ化、分析し、適切なアドバイスを提示して安全運転を促したり、製造機器やサーバなどミッションクリティカルな環境が求められる現場で故障予兆を検知した場合に、アプリケーションを通じてリアルタイムで顧客と自社の担当者に通知をしたりといったことが可能になる。
IoT Cloudを利用した1対1マーケティングの例。クラウド上にあるデータをThunderで分析し、アプリなどに情報を渡す