Yahoo! JAPANの米国現地法人YJ Americaは、同社が所有する米国データセンターの仮想化統合基盤に「Open Compute Project(OCP)」の仕様に基づいたシステムを採用した。
クラウド基盤を構築するオープンソースソフトウェア「OpenStack」を利用した仮想化統合基盤への導入で、Yahoo! JAPANでOCPが採用されるのは初とのこと。製品を提供した伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が10月13日、発表した。
米国では、データセンター向けに最適化されたオープンハードウェアの需要が拡大しており、特に「ウェブスケール」や「ハイパースケール」と呼ぶ大規模なITインフラを必要とする事業者を中心に、特定ベンダーに依存することのない機器の調達が進んでいる。
OCPは、米Facebookが自社サービスで使用しているデータセンターやサーバなどのハードウェア仕様をオープン化するために2011年に開始したプロジェクト。データセンター向けハードウェアを標準化、オープンソース化し、大規模データセンターに最適なハードウェアを設計、提供するための運営団体として「Open Compute Project Foundation」が設立された。
現在では、Facebookなどのユーザー企業に加え、大手ハードウェアベンダーやソフトウェアベンダー、SI企業など、全世界で150社以上がOCPに加盟し、OCP仕様のサーバ、ストレージ、スイッチ、ラックなどの開発が進められている。
CTCは、2014年1月に国内で初めてOpen Compute Project Foundation からSolution Provider認定を受け、OCPが正式に認定する製品の販売、設計、構築、保守を2014年4月に開始するとともに、OCPの普及に取り組んできた。
OCP仕様のサーバ、ストレージなどの製造を行っているODM(Original Design Manufacturer:発注元企業のブランド名で設計から製造までを手がけること)各社と協力することで競争力のある機器調達を可能としている。
今回、これらの取り組みと実績が評価され、Yahoo! JAPANのOpenStack基盤へのOCP製品の導入が決まったとのこと。CTCは、ITOCHU Techno-Solutions Americaとともに、OCP仕様のサーバ、ストレージ、ラック、電源装置の共同評価、製品販売、ラックレベル構築、保守サポートまでをトータルで提供する。
Yahoo! JAPANは、2015年4月にYJ Americaが保有する米ワシントン州のデータセンターを正式に稼働した。東日本エリアと西日本エリアに加え、国外のデータセンターを活用することでBCP強化を実現する。また、米国における設置地域の電気料金が廉価であることから、グループ全体のサーバ運用費用の削減を図ることも狙いという。
北米ではOSSを用いた技術革新が広がっており、2013年に自社データセンターの仮想化統合基盤として採用したOpenStackをはじめとして、Yahoo! JAPANではOSSから積極的に新しい技術を取り入れている。
ウェブスケールで活用されているOCPを自社のOpenStack基盤に採用することで、大規模データセンターに対応したコスト競争力の強化と、さらなる基盤技術力の向上が期待できる。
また、ハードウェアのオープン化により、ハードウェア調達時に自社が求める製品設計や運用の仕方などを検討し、コスト、技術の両面から最も適した製品を選択することが可能となる。
Yahoo! JAPANでは2014年度にOpenStackによる約5万のVM(仮想マシン)の管理を実現し、今後さらに管理台数を拡大する計画で、OpenStack以外の分野も含めてOCPの導入拡大を検討している。