「オープンソースに注力し、インフラ系ではない新たな顧客を獲得していく。クラウドやモバイルなどで構成する第3のプラットフォームを牽引していく」。EMCでエマージングテクノロジ事業部技術戦略担当バイスプレジデントを務めるRandy Bias氏は、同社がオープンソースに注力する理由をこう説明する。
EMCは昨今、オープンソースへの関わりを強化してきた。クラウド運用基盤の「OpenStack」に関する活動に注力しているほか、自社製品のオープンソース化を図っている。例えば、ソフトウェア定義ストレージ(Software Defined Storage:SDS)を実現するストレージ仮想化ソフトのコントローラ「ViPR Controller」を「CoprHD」の名称でオープンソース化して公開済みだ。
EMC エマージングテクノロジ事業部 技術戦略担当バイスプレジデント Randy Bias氏
Randy氏は10月21日、EMCジャパンの会議室でEMCがオープンソースに注力する狙いを説明した。まず第1に、時代の情勢として、ITのプラットフォームが、第1のプラットフォーム(メインフレームと端末)から第2のプラットフォーム(クライアント/サーバ)を経て、クラウドやモバイルなどで構成する第3のプラットフォームへと移行しつつあることに触れた。
第3のプラットフォームは急成長を遂げ、2018年までにアプリケーションの半数が第3のプラットフォームで稼働するという。EMC自体は第2のプラットフォームの会社だが、今後は第3のプラットフォームの会社になりたいとした。こうした理由から、第3のプラットフォームの要素となる、仮想化基盤ベンダーのVMwareやオープンソースに投資しているという。
DevOps時代は事業部門がサービスの可用性に責任を持つ
第3のプラットフォームは、コスト削減ではない新たな価値をユーザー企業にもたらす。このためには、企業は変化しなければならない。企業は変化を嫌うが、変化しない企業は生き残れないとRandy氏は言う。「Fortune 1000の企業リストが入れ替わるのは、変化できない企業がいるからだ」(Randy氏)
直近の問題としては、新たな価値を創造してビジネスを遂行する事業部門(開発部門)と、インフラを支えるIT部門が乖離しているという状況がある。これをDevOpsによって解決することが求められるという。
事業部門(開発部門)はこれまで、アジャイル開発によって素早く価値を創造しようとしてきた。一方、IT部門はインフラの可用性を高めるなどリスクの抑制に注力してきた。DevOpsの時代には、これらが融合するという。「アジャイル開発の思想をインフラの運用にも適用するとともに、開発者側にもリスクを負わせる」(Randy氏)
第2のプラットフォームの時代に、サービスの可用性に責任を持っているのはインフラを管理するIT部門だった。一方、第3のプラットフォームの時代では、開発者側がサービスの可用性に責任を持つようになる。アプリケーションは、ハードウェアの一定数は必ず壊れていることを前提に設計しなければならないという。
ターンキー製品でOSSの複雑さを回避する
第3のプラットフォームを支える主要なソフトウェアはオープンソースだ。ところが、オープンソースには危険もあるとRandy氏は指摘する。特に、OpenStackを実際に運用していくためには、多くのソフトウェア要素を組み合わせなければならない。このように、第3のプラットフォームの時代であっても、第2のプラットフォームの時代と同様に、ソフトウェアの複雑さが問題になる。
「複雑性は取り除いてほしいが、特定のベンダーにロックインされるのは勘弁したい」というのが顧客の声だ。「オープンソースでベンダーロックインを回避しつつ、複雑なソフトウェアを組み上げてすぐに使えるターンキー製品としてパッケージ化できる会社が求められている」(Randy氏)