企業の心臓部といっていいデータセンター。その構築に新たな変化が見られる。Google、Facebookなど技術に精通しており明確なビジョンがあり、標準化された技術ではなく、固有のニーズをもちハイボリュームという”ハイパースケール”の潮流だ。
Dellは8月、この潮流を活用したい企業向けに新しい事業部門「データセンタースケーラブルソリューション(DSS)」をエンタープライズソリューションズ内に立ち上げた。数年来の成功例を土台にしたもので、ハイパースケールの下を狙う。同時に、エンタープライズ分野の強化とサーバ世界シェアトップに向けた弾みにするという狙いもあるようだ。
グローバルローンチに合わせて来日したDellエンタープライズソリューションズ事業部ワールドワイド・セールス及び戦略担当プレジデントのBrian Humphries氏に話を聞いた。

Dellエンタープライズソリューション事業部でワールドワイド・セールス及び戦略担当プレジデントのBrian Humphries氏(右)とアジア太平洋・日本地区でエンタープライズソリューション事業部のバイスプレジデントを務めるPeter Marrs氏(左)
――データセンタースケーラブルソリューション(DSS)を立ち上げた。この背景は?
業界のトレンドの1つとして、ハイパースケール企業の誕生がある。Microsoft、Amazon、Googleなどが代表例で、標準化されたものではなくカスタムのIT要件があり、かつ規模が大きいところだ。百人、場合によっては千人単位のITスタッフを抱え、自分たちが必要としているものを熟知しており、独自の要件を満たすものを求めている。
われわれはこのような企業のニーズを早期から感知しており、8年前に事業部内にDellデータセンターソリューション(DCS)を立ち上げた。DCSは成功し、今回ここで培った経験を活用する部門としてDSSを正式に発足させた。ターゲットは、ハイパースケール企業より少し規模が小さい企業だ。
これらの企業は独自のニーズがあり、目指すものが明確で、GoogleやAmazonを模倣したいが、リソースがないという課題を抱えている。完全にカスタムではなく、セミカスタムとなる。
市場のニーズを探るために社内で1年前に”ステルスモード”としてローンチしたところ、100社以上の顧客を獲得した。結果として、Dell社内でこれまでで最も急成長した事業となった。そこでさらに投資を行い、今回正式に部門として発表した。ハイパースケール向けのDCSも並行して継続する。
――どのような業種でセミカスタムのニーズが高いのか?将来的にメインストリームになる可能性は?
潜在ニーズがあるのは、石油ガス、ウェブ技術、研究リサーチ、通信サービス事業者、ホスティング事業者などで、ハイパースケール企業も一部含まれる。
コンシューマー級のハードドライブのあるサーバ、特別なOSを利用したいなど顧客のニーズはさまざまだ。多くはAmazonやGoogleが何をやっているのかをよく調べている次世代のITをもつ企業だ。
例えばインド最大のECサイトであるFlipkartは、DSSとハイパーコンバージドインフラの事例だ。インドはECで中国に次ぐ世界2番目の成長率を誇り、将来の成長に対応できるアーキテクチャを必要としていた。シャーシからサーバまでインフラ管理に加え、特別な電源管理、特別なグラフィックカードを利用したいというニーズがあり、これを満たすPowerEdgeサーバ3万台を4週間で実装した。
この手法がメインストリームになるかというと、そうではないだろう。だが確実に増えている。われわれはこの市場を60億ドル規模と見ている。成長率は年10%を上回る。
――市場戦略は?
エンジニア、セールス、サプライチェーンなどの観点からその分野に精通した専門家を集めたチームを作り、顧客のニーズに応じる。規模のスケールに合わせてチームを増やす。
製品としては、PowerEdgeサーバや既存のDCSポートフォリオを活用する。