デルは2月25日、エンタープライズソリューションの戦略説明会を開催した。エンタープライズ事業担当で米本社 ワールドワイドセールスと戦略を担うプレジデントのBrian Humphries氏は「競合が分社化、事業売却などを進める中、Dellは同じCEO(最高経営責任者)のもと安定した動きをとっている。従来はPCの会社だったが、この数年で大きく変化し、デスクトップからデータセンターまでエンドトゥエンドソリューションを提供できるベンダーへと大きく生まれ変わった」とソリューションベンダーとして、デルが大きな成長を続けていると強調した。
ただし、「これまで手が届かなかったテクノロジを大衆化し、多くの人に届けていくことでテクノロジの敷居を下げることを一貫して実施している」とテクノロジ提供姿勢は従来から一貫していることも強調した。
この方針に基づいた新製品として、“Software-Defined(ソフトウェア定義)”型の垂直統合型システム製品の新版「Dell XC Webスケール・コンバージド・アプライアンス 2.0」を発表。「価格を従来製品よりも抑えながら、構成の柔軟性を拡大させ、ビジネスの機敏性を高め、成長にあわせた投資を実現し、運用と管理をシンプル化することでTCO(総所有コスト)削減を実現する」(米Dell デル・ストレージ担当バイスプレデント兼ジェネラルマネージャー Alan Atkinson氏)であることをアピールした。
Dell ワールドワイドセールス/戦略担当プレジデント Brian Humphries氏
今後はソフトウェア定義型がIT設計の基盤になる
Humphries氏はDellがM&Aでデスクトップからデータセンターまで、ハードとソフトのIT全般を提供する企業に変貌していることを強調した。製品の提供形態についても「オムニチャンネル戦略を取り、顧客が一番購入しやすいところから購入できるようになっている」とダイレクトモデルだけではないことを訴えた。
こうした施策で「昔ながらのPCビジネスでもシェアを伸張中でサーバ、ストレージと世界各地域でトップシェア、もしくはトップを狙えるようになってきている。HP(Hewlett-Packard)と比較しても、ビジネスの収益性が高いところが特徴」と競合と比較して優位なビジネスを続けているとした。
エンタープライズ事業で提供するテクノロジとしては、独占的なシェアを持っているベンダー製品を集めたベストオブブリードシステム、ウェブスケールのコンバージドアプライアンスを活用した“System of Systems”、サーバ中心のソフトウェア定義型システムの3種類に大別されるとした。
「今後は、ソフトウェア定義型がIT設計の基盤となるだろう。ただし、従来型のシステムがゼロになってしまうとは考えていない。従来型のシステムを選択する顧客は今後も存在し、われわれも製品を提供し続ける」(Humphries氏)
ソフトウェア定義型を「Future-Ready IT」として(1)オープンで標準的な基盤に設計され、変化するニーズに迅速に対応できる統合型、(2)ワークロードや予算にあわせコスト効率に優れたスケールアップやスケールダウンを実現するモジュラー型、(3)IT運用とサービス展開を簡素化する自動化――という3つのコンセプトを備えたものだと説明した。
Dell デル・ストレージ担当バイスプレデント兼ジェネラルマネージャー Alan Atkinson氏
ストレージを担当するAtkinson氏は「これからの時代、コンバージドが進み、ストレージ、サーバ、ネットワークの境目がどんどんなくなっている」と指摘。ただし、この戦略は「あくまでも顧客の選択肢ありき。さまざまなエコシステムを使って、顧客が望むものを提供する」と一方的に製品を提供するのではなく、さまざまな選択肢となる製品を提供していく。
Dellは製品ポートフォリオとして、Nutanix、VMWare、Microsoft、Red Hatなど複数のパートナー企業が提供するソフトウェア定義テクノロジを提供していることを特徴のひとつとする。さらに、その上にDell自身の最適化されたハードウェア、モニタリング機能、エンドトゥエンドソリューションアーキテクチャ、グローバルなサービスとサポートを提供できることを強みとしている。
2月25日付で発表したXC Webスケール・コンバージド・アプライアンス 2.0は、DellのPowerEdgeサーバにNutanixのソフトウェアを搭載している。
「昨年夏、Nutanixと提携した第1弾製品を発売したが、ティアワンベンダーでNutanixとの提携を実現しているのはDellだけ。これは非常に良い提携であり、シンプルで使い勝手がよいと顧客からも好評となっている」(Atkinson氏)
製品の特徴は、アプリケーションパフォーマンスの高速化を実現し、より高パフォーマンスのサーバとフラッシュやハードディスクといったドライブオプションが仮想デスクトップ基盤(VDI)やプライベートクラウド、ビッグデータといった要求水準の高いワークロードを支援できるという。
また、さらなる高密度化を実現し、ラックあたりの搭載容量を16Tバイトへと倍加させることで同レベルのデータを半分のラックスペースで運用でき、あらゆるユーザー、特にマネジメントサービスプロバイダー(MSP)や共用型のデータセンターに対して多くのメリットを提供すると説明する。
新製品は、柔軟性の向上を実現し、アプライアンスごとに用意された複数のドライブやメモリ、プロセッサオプションで要求の厳しいワークロードへの対応やきめ細やかな拡張を実現すると解説する。新版で搭載されるサーバの「XC630」は1Uであり、1世代前に設計された「XC720xd」と比べて約半分のラックスペースで、より多くのVDIユーザーを支援できるとしている。提供開始時期は日本では3月中旬からを予定している。