SAPジャパンは11月12日、インメモリデータベース基盤「HANA」の上で動作するビジネスアプリケーション群「SAP S/4HANA」の最新版として、統合基幹業務システム(ERP)「Enterprise Management」の提供を開始すると発表した。
Enterprise Managementは、これまで提供していた会計領域に加え、営業やサービス、マーケティング、取引、調達、製造、サプライチェーン、アセット管理、研究開発、人事などの領域でインメモリコンピューティングを実装できるようにする。
また「SAP S/4HANA Lines-of-Business」も同時に提供を開始する。S/4HANA Enterprise Managementの機能と、各業務部門向けのSAPのオンプレミスやクラウドを結びつける機能だ。対応するのは、財務向けSaaS「Cash Management」、人事向けSaaS「SuccessFactors」、調達向けSaaS「Ariba Network」、マーケティングおよびコマース向けSaaS「hybris」などとした。
HANAはDWHなどの情報系処理に加え、勘定系や統合基幹業務システム(ERP)のオンライントランザクションも含めて、インメモリをベースにした1つの基盤上で高速に処理できる。このため、従来は時間のかかるバッチ処理を基本としていた計画や実行、予測、シミュレーションなどの手続きを、リアルタイム処理できるようになる。
また、即時のデータ分析が可能なHANA関連サービスの利用方法として、各業務部門データを取り出し経営会議で検討に必要なビジネス指標をリアルタイムに示す機能を持つシステム「Digital Boardroom」を提案する。
SAPは、HANAでデータを大量処理することにより、リアルタイムで受払処理や在庫金額の可視化できる「リアルタイム在庫管理」を提案している。
インダストリー事業統括本部 シニアディレクター 大我猛氏
リアルタイムに在庫管理ができるようになると、バッファとなる在庫を圧縮し、在庫の回転率とロットサイズをより細かくすることにより、カスタマイズした製品の製造にも迅速に対応できるようになるとした。「実際の在庫数とシステム上の在庫が正確であれば、適正適庫を管理でき、在庫回転率が上がれば、業務工数が変わる。納入頻度や納入プロセス、ひいては流通全体を見直すことができる」(インダストリー事業統括本部 シニアディレクター 大我猛氏)
Enterprise Managementは、野村総合研究所が早期導入しており、ビジネスプロセスやシステムがS/4HANAによって簡素化できる点や、ユーザーエクスペリエンスを評価している。
S/4HANAは8カ月で顧客数1300社以上、日本でも50社以上が採用されている。SAPは既存のERPなどからS/4HANAへの移行サービスも12日から提供する。さらにS/4HANAのコンソーシアムに参加している22社やS/4HANAを販売する1000社以上のリセラーとの連携を強化しビジネスを進めると説明している。
Enterprise Managementで提供する機能