「クラウドファースト」は、各業界の名だたる先進的な企業のクラウド利用が加速する流れの中で、ビジネスに寄与する”攻めのIT戦略”を進め、大きな成果をあげている。現在の経営を取り巻く環境は実に複雑でスピードが速く、もはやクラウドを活用しなければ、時代の変化に追随できないという企業は多い。
自社でインフラやデータを管理したほうが安全で可用性が高いといった「安全神話」が、ほとんど聞かれなくなってきた今日、クラウドに興味はあっても利用を踏みきれなかった企業も、一斉に重い腰を上げざるを得ない状況になった。
しかしながら、クラウドを検討するにも自社お抱えのSIerは、いっこうにクラウドに明るくなく、導入の勘所を求めてクラウド専業SIerに相談するというケースも少なくない。では、どういったところが導入の勘所となるのか。Amazon Web Services(AWS)の導入ケースを、今回から6回に分けて説明していこう。
AWS導入に事前チェックは欠かせない
そのシステムはAWSで動くのか
導入にあたり、まずチェックするのは「AWSで動くのかどうか?」であろう。
結論としてほとんどの場合「Yes」だが、事前に確認すべき勘所は、以下の3点だ。
(1)利用したい商用アプリケーションはAWSを動作環境にしているか
ほとんどのアプリケーションがAWSで動くといっても過言ではないのだが、アプリケーションベンダーが動作検証を行っておらず、AWSをサポート対象としていない場合があるので事前に確認しておこう。
(2)共有ディスク型クラスタリングを用いていないか
データベースサーバの冗長化等を目的として、SAN(Storage Area Network)ストレージを利用していないだろうか。AWSの標準サービスとしてSANは提供されていないので、代替手段を用いる必要がある。
データベースサーバであればAmazon RDSを用いることで、標準でレプリケーション型の冗長化機能を用いることができる。これまでは高額なストレージを購入し、専門知識を有するSIerを雇い、相応の期間を要して構築していたデータベース冗長化もAWSであればオプションの選択1つですぐに利用可能である。
従来のオンプレミス環境でよく利用されていたクラスタリングソリューションも、AWSに対応しているものもある。サイオステクノロジーのLifeKeeper/DataKeeperや、NECのCLUSTERPROなどがそれだ。要件に合わせて利用を検討してみるとよいだろう。
(3)IPマルチキャスト/ブロードキャストを用いていないか
AWSを始めとした多くのクラウドサービスは、マルチキャスト/ブロードキャストを利用することができないので留意が必要である(正確にはGRE tunnelやL2 Peer-to-Peer VPNを用いることで実現が可能だ)。