”分析機能をあらゆる人に”として、Salesforce.comが「Analytics Cloud」でビジネスインテリジェンス(BI)に参入してから1年が経過する。過去に「CRM」の概念を覆したようには、なかなか裾野を広げられていないアナリティクス市場に革命を起こせるのか――同社でAnalytics Cloudマーケテイング担当シニアバイスプレジデントを務めるStephanie Buscemi氏に話を聞いた。
Salesforce.com Analytics Cloudマーケテイング担当シニアバイスプレジデント Stephanie Buscemi氏
――「Analytics Cloud」のプラットフォーム「Wave Analytics」を2014年の「Dreamforce」で発表してから1年が経過した。これまでの経緯は?
製品側では、2014年10月のDreamforceで、Anaytics Cloudのプラットフォーム「Wave」をGA(一般提供)にした。当時、数十社の顧客がパイロットに参加しており、既にアクティブにWaveを使っていた。その後、この10カ月の間、6回のプロダクトリリースを行った。通常Salesforceは年に3回のリリースサイクルで新機能を提供しているが、Waveは新しい製品なのでリリースの頻度を増やした。今後は、他の製品と同じように年3回ペースにする。
今年の6月には、Wave上で動くAnalytics Applicationsとして、セールスマネージャーと営業担当者が利用できるKPIを含む「Sales Wave Analytics」アプリケーション、それにサービスマネジャーとサービス担当向けの「Service Wave Analytics」アプリケーションをパイロットとして発表した。
Waveは分析のユースケースを構築できるプラットフォームだが、SalesとServiceはパーソナライズされたアプリとなる。数十種のプリビルドダッシュボードを用意しており、われわれが16年かけて蓄積してきたCRMの知識をすぐに活用できる。
Waveプラットフォームのライセンスが必要だが、Waveを手に入れやすくするため、これらのアプリはスタンダロンアプリとして購入できる。
Salesforceはあらゆる規模の企業が情報技術を利用できるように、ITを民主化(デモクラタイズ)してきた。WaveとWave Analyticsアプリでも、価格と実装時間を短縮できるので、顧客はバリューをすぐに得られる。
――今年のDreamforceでは最新のAnalytics Cloudを発表した。ポイントは何になるのか?
2014年10月が1.0で、今回は2.0と位置付けている。
モバイル機能を強化し、新たにiPadエクスペリエンスを導入した。ユーザーのモバイル端末利用動向を見たとき、iPad向けを強化する必要があると感じたためだ。iPad向けWave Visualizationにより、チームパフォーマンス、コンバージョンレートなどの指標を直感的に利用できるようになった。
主な機能としては2つある。1つ目は「Wave Links」として、CSVやExcel形式で送られたファイルをそのまま開くことができるようになった。App Storeで無料でアプリを公開する。2つ目は「Dashboards Builder」で、数クリックで自分のスマートフォン上にダッシュボードを作成できる。これらは、”データアナリストやIT担当ではないビジネスユーザーが分析機能を利用できるようにする”というわれわれの戦略に基づくものだ。
最大の特徴は「Wave Actions」だろう。洞察を得た後、メールなど他のシステムにいくことなく、Analytics Cloud上でタスクの割り当てといったアクションが可能になる。カスタムのWave Actionsを作ることもできる。
この1年、必要なデータを集めて洞察を得た後、次のステップは何か、高速に次のアクションがとれるかに焦点を当ててきた。Analyticsのワークフローに入れることで、他のシステムを経由する必要がなくなるので生産性をアップできる。これは、分析分野での競合企業は実現していない機能であり、大きな差別化と位置付けている。
CRMシステムへのデータ入力が面倒という営業担当の意見が指摘されているが、データからの分析が自分で得られるようになることで、システムの利用に積極的になれるだろう。Waveは重要な役割を果たす。
Analyticsアプリケーション側も進展しており、パートナーエコシステムが着実に前進している。パートナーは約27社で、Dreamforceでは、このうち13社がWaveプラットフォーム上で動く分析アプリを披露した。例えば、Apttusは見積もり、契約、顧客データから洞察を得られる「Apttus Quote-to-Cash Intelligence」を発表した。Salesforce.comからは現在SalesとServiceだけだが、われわれが提供していない業種や業務でパートナーがさまざまな分析アプリを構築することで、エコシステムを活性化させていく。