2015年は、あらゆるビジネスプロセスの根幹にさらに深くテクノロジが組み込まれた年だった。テクノロジは今年も、個人事業主からFortune 500の大企業まで、事実上あらゆる事業体の原動力だったと言える。この記事では、その動向を観察して伝えてきた米ZDNetが誇る世界中の主力記者が協力して、2015年のビジネステクノロジを形作った5つの主なトレンドを紹介する。
1.クラウドが成熟し、第1の選択肢に(Larry Dignan、米ZDNet編集長)
クラウドはソフトウェアや企業のインフラを提供するモデルのデファクトスタンダードになりつつある。2015年がクラウドにとって成熟の年だったことを考えれば、これも不思議なことではない。2015年を振り返って重要だと考えられるテーマの中でも、特に重要なのは次のポイントだ。
- サービスとしてのインフラストラクチャを提供する主要なプロバイダーの立ち位置が固まった。2015年に初めて財務状況を開示した「Amazon Web Services」は、圧倒的な業界首位の座を引き続き維持し、恐ろしいほどの勢いで新たな機能を提供し続け、エンタープライズ向けスタックの最上層に位置するアナリティクスツールやビジネスインテリジェンスツールの提供を開始した。「Microsoft Azure」も将来有望な機械学習やアナリティクス関連の取り組みを進め、混戦で一歩リードしている。IBMはエコシステムの構築を続けており、ハイブリッドクラウド市場を主戦場に戦っている。また、Googleは企業へのアプローチを強め始めた。
- Salesforceは業界首位の座を守り、顧客関係管理のオペレーティングシステムとして、自らの立ち位置を確立し始めた。「Analytics Cloud」の提供を開始したことが、Salesforceの今後の方向性を象徴している。
- 「業界クラウド」を提供する事業者の登場や、一連の特定業界をターゲットにした取り組みによって、クラウドコンピューティングの専門性が高まった。
- ハイブリッドクラウドが重視され、あらゆるデータセンター事業者が、パブリッククラウドのコンピュートリソースへのきっかけを提供するようになった。
- クラウドコンピューティング市場では、価格の重要性が低下してきている。もちろん価格競争はあるが、顧客にとっての最重要ポイントはスピードだ。また、顧客はオンプレミスのインフラとクラウドを併用するようになるにつれ、クラウドのコスト最適化に力を注がなくてはならなくなっている。オンプレミスのインフラは、将来最終的にはサービスに道を譲ることになるだろう。
これらの要因を考えると、多くの大企業の戦略は、今後クラウドファーストが中心になっていくだろう。2015年が終わろうとしている現在、最大の疑問は、ソフトウェアスイートがクラウド市場で勝ち残れるかだ。OracleとSAPは明らかにその目に賭けている。
2.人工知能が勢いを増す中、批判も拡大(Jason Hiner、米TechRepublic編集長)
人工知能(AI)が(少なくともその概念が)計算機科学の世界に登場したのはかなり昔のことだが、「IBM Watson」「Siri」「Google Now」「Amazon Echo」などの製品の知名度が高まるに従い、AIの勢いは増している。しかし実際にAIがもっとも力を発揮しているのは、金融サービス、製造業、医療、防衛産業などの業界のバックエンドだ。