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展望2016

宇宙のように膨張する企業ITをどうコントロールするか--2016年展望

怒賀新也(ZDNet Japan編集長)

2016-01-01 00:00

 2016年が幕を開けた。テクノロジが、企業成長の原動力になる傾向は、今年ますます強くなる。ITが革新するビジネスエリアは加速度的に広がる一方、それに比例する形で、急速に高まるのがセキュリティリスクである。


 ビジネスとセキュリティ――この2つの領域拡大という現実を前に、企業ITに与えられた選択肢は「従う」という1つだけ。

 この拡大、例えるなら宇宙の膨張のようだ。137億年前に起きたビッグバン以降、宇宙は膨張を続けてきた。先端に行けば行くほど、膨張スピードは速い。ビジネスとセキュリティは今年、このビッグバン宇宙論のイメージで急速に存在エリアを広げる。

 宇宙の膨張さながらに、コントロール不能と見られる企業ITを取り巻く環境だが、企業でITを任される人は、なんとかしてこれを制御しなければならない。高い壁ほど乗り越えると気持ちがいいとも言うが、2016年の企業ITは、間違いなくこの壁の前に立たされる。

ビジネス拡大への意識

 2016年の傾向として1つ考えられるのが、アプリケーション領域の従来とは異なる方向性での拡大だ。いわゆるエンタープライズITというと、IaaSやPaaSを中心としたクラウド、サーバ機、ストレージ、運用管理といったどちらかというとインフラ寄りの動きに焦点が当たる傾向があった。

 裏を返すと、従来のIT投資の目的が、インフラ最適化によるコスト削減であり、ビジネス、もっと言えば売り上げに直結するものではないと考えられていたことを示す。


 ここに来て、ビジネス=ITの図式が、大企業を含めて本格的に意識されるようになった。セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武、デニーズ、ロフト、セブン銀行などさまざまな業態に広がるグループ企業をインターネット上で横ぐしにし、統合的に買い物ができる新サービス「omni7」を11月に開始した。

 お店で商品を確認してネットで買ってしまう「ショールーミング」は、小売業の頭痛のタネだった。ここで、セブン&アイは、店舗とネットを統合し、店舗でもネットでもどちらで買ってもらっても構わないという体制をつくった。ウェブで見て店舗で買う「ウェブルーミング」効果で、お店に足を運ぶ若年層が増えた。高額品などは、むしろウェブルーミングの購入プロセスを踏むと考えられる。

 これは、家賃や人件費がかかると言われる店舗のデメリットを抑え、「実物の商品を見られる」という最大の利点を、ITを用いて最大化する示唆的な取り組みだ。

 グループを統合した購入サイトを作るといったことだけなら、もしかすると容易に見えるかもしれない。しかし、こうした仕組みを実装しようとすれば、在庫情報の管理、製造業なら適正な需要予測や生産計画、より短い納期を提示する仕組みなど、バックエンドの情報システムの整備が不可欠になる。実現へのハードルは高い。

 だが、もしも、競合他社が実行してしまったら、決定的な差をつけられてしまうかもしれない。極論として、「やる」選択肢しかないとする理由はここにある。

 アプリケーション、すなわちビジネスに直結するソフトウェア開発が2016年に重要になる背景は、これだけではない。

 「API経済圏」の動きである。ウェブ上にある優れた複数の機能を、RESTful APIでつなぎ合わせて1つの大きなアプリケーションを構築するこの手法は、米国を中心に急速に進んでいる。新春特集としても展開している「FinTech」も、この典型例である。

 FinTechについては、ITというよりは金融業界における革新として、広く認知されている。ITの膨張が、もはやあまりITと認識されることもなく、ビジネスの世界に広がっていることを示すことになった。

セキュリティは危機的

 API経済圏の革新だが、一方で、セキュリティ面での不安を指摘する声もある。自社システムだけでなく、クラウド上のサービス、他社のシステムなど、管理するネットワーク環境が多層化してくるからだ。


Rami Ben Efraim氏。軍隊での「物理的」な防御対策の重層性が、サイバーセキュリティ対策に応用できるとして現職に起用されたと話す

 セキュリティは、2016年もさらなる膨張が予想されるエリアである。イスラエル空軍の訓練部隊トップを務め、現在はチェック・ポイント・ソフトウェアの政府・防衛庁担当長を務めるRami Ben Efraim氏は「2016年、セキュリティのトレンドはさらに悪化へと向かう」と指摘する。

 日本政府ともセキュリティ対策で話をしているというEfraim氏は具体的に、銀行や原子力などの領域で、深刻なサイバー攻撃の脅威があると指摘する。

 サイバー攻撃については、ウイルス対策ソフトや次世代ファイアウォール、URLフィルタリングといった入口対策、外部通信遮断などの出口対策、検知センサなどによる内部対策などがある。ウイルス対策ソフトなどあらかじめ脅威を定義するパターンファイルによる対策の限界が指摘されるようになり、サンドボックスや振る舞い検知などに注目が集まっている。

 だが、それももう限界に来ているとEfraim氏。「企業だけでなく、政府なども協力してグローバルネットワークをつくり、攻撃者の情報を共有する必要がある」(同)という。

 サイバー攻撃の防御が極めて難しくなる一方で、前述のアプリケーション構築の進化やInternet of Thingsによってネットワークにつながるモノが急増するというのは皮肉でもある。

クラウド化も加速

 ビジネスとセキュリティの両面で、企業ITの膨張が進むという現実に、IT企業側も手をこまねいているわけではない。クラウド市場をリードするAmazon Web Servicesの日本法人、アマゾン ウェブ サービス ジャパンで代表取締役社長を務める長崎忠雄氏は、セキュリティを懸念する企業が、AWSに任せることで解決を図った事例があると話す。


 今やセキュリティは、クラウド企業にとって、自社のクラウドサービスを使ってもらうための1つの切り札にもなっているようだ。

 長崎氏は企業ITのクラウド化について「ニューノーマル」になると指摘。ハイブリッドクラウドや、サーバ、ストレージ、ネットワークの仮想化、それに関連したOpenStackへの各社の取り組みなどは、引き続き2016年の主要トピックになる。(1月2日に長崎氏のインタビューを掲載。)

 ビジネス、セキュリティを軸に広がる企業ITの広がりは、もしかすると(イメージとして)宇宙の膨張よりも速いかもしれない。管理どころか、だれ一人実態をつかめないような、巨大なシロモノになってしまう可能性もある。それほど、制御不能な膨張を始めてしまったのである。

 ZDNet Japanは、ここで起きている出来事を伝えるべく、2016年も全力で情報を提供していく覚悟だ。

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