SDN座談会(4):ネットワークからアプリケーションを理解することの重要性

吉澤亨史 田中好伸 (編集部) 山田竜司 (編集部)

2016-01-29 07:00

 ネットワークをより柔軟にできるというSoftware-Defined Networking(SDN)に注目が集まっている。SDNを実際に導入するユーザー企業も見られるようになっている。ネットワークをソフトウェアで制御することで何が変わるのか。今回はSDNに関連した製品やサービスを手掛けるベンダー5社に集まってもらい、SDNを取り巻く現状と未来を見通した(第1回第2回第3回)。参加したのは以下の5人。

  • 日本IBM グローバル・テクノロジー・サービス事業本部 サービス・デリバリー 技術理事 ディスティングイッシュド・エンジニア 山下克司氏
  • シスコシステムズ システムエンジニアリング SDN応用技術室 テクニカルソリューションズアーキテクト 生田和正氏
  • インターネットイニシアティブ(IIJ) サービス推進本部 サービス推進部長 林賢一郎氏
  • NEC スマートネットワーク事業部 マネージャー 勝浦啓太氏
  • ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏

物理も論理も一元的に可視化

――IT部門がSDNを導入する場合に、今後どうしていくべきなのか、また今後の展開を聞きたいと思います。

藤田氏 たとえば「SDNを使って迅速性を上げましょう」という話であれば、「迅速性を上げた基盤としてちゃんと使ってもらいましょう」という観点も重要です。価値のある基盤にすることでIT部門がさまざまなバリューを出せると思います。事業部門ごとのオーダーが増加し、基盤拡張ということもあると思います。

ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏
ネットワンシステムズ ビジネス推進本部 第2応用技術部 クラウドソフトウェアチーム シニアマネージャー 藤田雄介氏

 それから人材育成ですね。先ほども申し上げましたが、SDNをきっかけにIT部門、ひいてはネットワーク部門がさらに上位を理解し、オーケストレーターやREST APIを把握する必要もあると思います。ベースとしてのネットワークの知識があるので、そこは必ず生きてきます。それをベースに、さらにスキルアップを図っていくというのがIT部門には重要かと思います。

 今後の展望としては、先ほど挙げた可視化が一つです。可視化に関してはやはり、製品によっては物理しか見えない、論理しか見えないという制約もありますので、それを統合的に可視化する。パブリッククラウドに関しては、先ほどのIIJさんのサービスを利用しながら、オンプレミスと連携しますという環境もあるかと思いますが、その場合には、パブリッククラウドで提供されるNFV(Network Functions Virtualization、ネットワーク機能仮想化)のサービスとオンプレミスを全部統合で管理したいという要望が出てくると思います。

 また、状態可視化が完了した後にはセキュリティの状態も把握したいというような要望が出ると思いますので、そういった統合的な管理が今後必要になってきます。あとは先ほど挙がったSD-WAN(Software-Defined WAN)も非常にホットになってくると思うので、ネットワングループとしても「Cisco Meraki」を取り扱っていますし、SD-WANの新しいサービスの話題も出てくるのではないかと思っています。

 また、コンテナをネットワークで解決できるのはSDNしかないと思っています。コンテナは今後確実に主流のひとつになるテクノロジだと思うので、そこにマッチするようなSDNが必要になってきます。「作って壊す」ことをくり返すコンテナのコンセプトは、まさにSDNのコンセプトと一緒で、「作っては消す」というサイクルを簡単にできるところが、ものすごく相性が良いんですね。このあたりが展望として注力していくところになります。

オープンであることの強み

山下氏 企業のIT部門という立場でインフラをみていくと、クラウドをベースに非常に速くテクノロジが出てきていて、それを既存のIT運用と同時に推進していく必要があります。クラウドに対応したインターネット上のアプリケーションを作るという一方で、社内の既存のITプロセスを動かしていかなくてはいけないというのが厳然としてあります。

 社内のワークフローやERP(統合基幹業務システム)、銀行であれば勘定系のような基幹業務といわれているところとクラウドに対応したインターネットのアプリケーションという2つのニーズを取り扱っていかなければいけない。そういうことを正しく認識していくことが今のIT部門が直面している難しさだと思います。

 これまでの社内システムの特徴的なところは、トランザクションのボリュームが読めるということです。コンシューマーをお客さまにしているウェブアプリケーションとは違って突然ユーザーが増えたり、トランザクションが増えたりせず、社員数や生産量にぴったり合わせて運用しています。

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