旧バージョンの「Windows」であれば、現時点で最強のブラウザは「Google Chrome」だろう。しかし、Windows 10のブラウザ事情はまったく異なる様相を呈している。
Windows 10では新たな選択肢が用意された。Microsoftが「Internet Explorer」に代わるブラウザとして新たに開発した「Edge」である。Edgeは、現時点ではWindows 10でのみ利用できる。しかしMicrosoftが先日、EdgeのJavaScriptエンジン「ChakraCore」をオープンソース化したため、Windows 7、8、8.1用のEdgeが間もなく登場する可能性がある。しかも、MicrosoftはChakraCoreを「Ubuntu Linux」にも移植する計画を発表している。
前回、Windows 10用ブラウザの比較テストを実施したのは2015年6月のことで、Windows 10とその搭載ブラウザはまだ後期ベータ版の状態だった。その後、Windows 10は正式にリリースされ、大幅にアップグレードされた。今回の比較テストはWindows 10のバージョン10586.63で実施した。これは2016年1月中旬の時点で最新のバージョンである。
使用したPCは「ASUS CM6730」。このデスクトップPCは、CPUに第3世代のIntel Core i7-3770(3.4GHz)、グラフィックカードにNVIDIA GeForce GT 620、そして8GバイトのRAMと1テラバイトのハードディスクドライブを搭載している。
このPC上で、Edge 25とInternet Explorer 11に加え、現時点で広く普及しているブラウザの最新バージョン(本稿執筆時点)をテストした。すなわち、Chrome 49、Firefox 43、Opera 34である。今回のテストにSafariは加えなかった。理由は、AppleがWindows用Safariのメジャーバージョンアップを終了したからだ。とはいえ、同ブラウザのセキュリティ更新は今後も継続される予定である。
それでは、主要ベンチマークにおける各ブラウザの成績をみていこう。
「JetStream 1.1」: このJavaScriptベンチマークは、サポートが終了した「SunSpider」をベースに開発されたものである。多種多様なJavaScriptベンチマークを実施したうえで、各ベンチマークのスコアを統合し、全体のパフォーマンスを示す単一のスコアを算出する。JetStreamには、JavaScriptベンチマークスイートである「SunSpider 1.0.2」と「Octane 2」のベンチマークが統合されている。また、オープンソースプロジェクト「LLVM Compiler Infrastructure」のベンチマークを、「Emscripten 1.13」でJavaScriptにコンパイルしたベンチマークも統合されている。さらに、オープンソースプロジェクト「Apache Harmony」の「HashMap」をベースにしたベンチマークと、「CDx」のリアルタイムJavaベンチマークを手動でJavaScriptに変換したベンチマークも統合されている。JetStream では、数値が高いほど優秀なスコアを示している。
ベンチマークの結果、Windows 8.1までのWindowsではChromeが独走状態だったが、Windows 10で1位に輝いたのは231.78ポイントのEdgeだった。以下、196.86ポイントのChrome、186.29ポイントのOpera、182.46ポイントのFirefoxと続く。ちなみにInternet Explorerは133.07ポイントと、他のブラウザに大きく水をあけられる形となった。
「Kraken 1.1」:このベンチマークはJetStreamと同じく、サポートが終了したSunSpiderをベースに開発されており、JavaScriptのパフォーマンスを測定する。この基本的なJavaScriptベンチマークには、ブラウザの典型的な使用例を想定したテストが追加されている。FirefoxのMozillaが開発したこのベンチマークでは、数値が低いほど優秀なスコアを示している。